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間違いに気づくのは「怪我をしてから」 150km右腕が野球人生に残した一番の悔い

最速150キロを記録した早大時代、内田氏が犯した「間違い」とは【写真:本人提供】
最速150キロを記録した早大時代、内田氏が犯した「間違い」とは【写真:本人提供】

最速150キロでプロを目指した内田さんが大学3年で犯した「間違い」

――池田さんは腰のヘルニアの影響もあり、高1で野球を辞めています。どの時代の自分に後悔がありますか?

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池田「自分も中学時代、プロ野球選手をよく真似したし、選手がインタビュー、番組で語った技術論を参考にしていました。200回も300回も読んで、全ページを覚えた本もありました(笑)。でも、それが原因で結果的にイップスになり、打てなくなった。今、こうして指導する立場になると、技術論よりトレーニング論に目を向けた方が良かったと思います。中学時代は全試合、父にビデオを撮ってもらい、帰ってきたら分析してプロの選手と比較していました。その作業自体は今、自分がやっていることと変わりませんし、良かったと思います。

 間違っていたのは参考にする基準において、体の視点が抜け落ちていたこと。体の原理原則をもとにフォームを考えれば、大きく違ったと思います。いろんな本を読んで、もちろん参考になった部分たくさんありますが、自分に哲学がなく、何をもとに信じるかの判断基準がありませんでした。腰のヘルニアもやりましたが、それは捕手だからしょうがないと当時は思っていました。でも、今考えたら単純なしゃがみ方も含め、人間の体の構造として最適なベースの動きが全くできていませんでした。そういう反省から学び、今の発信に生かしています」

――内田さんはどうでしょう? 早実で甲子園出場、早大で日本一になり、下級生の頃に最速150キロを記録するなど、卒業後はプロ入りを目指していました。

内田「大学3年で肘を怪我したことですね。怪我する前が凄く良い状態で、怪我はしたものの、その期間にトレーニングをしたらもっとレベルアップできると単純に考えていました。でも、1年間も投げなかったら体も変わるし、モビリティも無視していました。そうしたら全然投げられず、イップスになり、社会人に行ってもまともに投げられない状態のまま。最後は腕の問題と考えて、腕ばかりに偏った練習をしていました。池田さんがよく言うのですが、体の末端だけの練習でコアの体幹を全く意識しなかった。今、思えば自分を狂わせるだけの練習だったと思いますし、その時に体の根本を見直せたら違った野球人生があったと思います」

――それぞれが知識、思考の誤りによって怪我や不調に結び付いたことから「NEOREBASE」での情報発信につながっていますね。

内田「経験すると誰もがそう思うのですが、今の小中高生に言いたいのは、間違いに気づくのは怪我をして投げられなくなった後ということです。今、怪我したことがない人は自分が怪我をするとか、投げられなくなるとか思っていないと思います。自分自身がそうでした。絶対失敗しないことは難しいですが、ひょっとしたら自分も怪我して、明日から投げられなくなるかもしれないと心のどこかで想定しておく。そうすれば、やるべきことは見えてくる。今に満足しないで、後から気づくのではなく、どこかで自分を疑い、正しい情報を得ようと努力をすること。そのサポートができるように、自分の体験をもとにした発信しています」

「NEOREBASE」が掲げている「理想的パフォーマンスピラミッド」の図【写真:NEOREBASE提供】
「NEOREBASE」が掲げている「理想的パフォーマンスピラミッド」の図【写真:NEOREBASE提供】

――情報化社会で指導者に聞いたり、本で調べたりしなくても、ツイッター、YouTubeでそれっぽい情報が簡単に手に入る半面、情報過多の状態にあり、頭でっかちになりやすい。目に見えやすい事象より、なぜそうなるのかの論理を学ぶことが重要ですね。

小山田「まさにそう思います。本当に大切なのは土台の部分。それを理解するのは、そんなに難しいことではないと思います。しっかりと『パフォーマンス・ピラミッド』(写真参照)の構造を理解していれば、自分も内田も怪我を防げたと思っています。そこを知るだけでも救われる野球人生がいくつもあるんじゃないでしょうか」

内田「大学教授の方が言っていましたが、研究者は現場の動きが分からないことがある、現場は研究者の考えを落とし込めてないこともある。その架け橋になることが自分たちの役割なのかなと思っています」

お股ニキ「それは、その通りだと思います。この3人は怪我をしたからそういう境地に達しているわけで、怪我をせずにピンピンと現役をやっていたら、こういう考えになっていない。怪我をしたから至った考え方をまとめることで、これからの世代に凄く役立つと思います。小山田さんと内田さんの経験は特に」

池田「正しい知識を得るのは難しいですね。僕も小山田もトレーナーですが、トレーナーとしての知識がない人がいっぱいいるんです。単純なしゃがみ方を正しく理解していないとか、ヒップヒンジという基礎的な知識さえ知らない人もいるとか。トレーナーなら誰でもいいわけではなく、体の構造を理解して動きに結び付けられるトレーナーはひと握りなんです。だから、一概にどうすべきとは言いにくい。個人的には、技術面に関してもYouTubeを見て『これ、いいな』と思った情報は今まで一度もないです」

内田「野球に限らない話ですが、情報の取捨選択を身に着けないとこれからの世界は生きていけないということですね」

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