選手とファンの関係と「待機選手問題」 中野友加里が考えるフィギュアスケートの価値
元フィギュアスケートの中野友加里さんが昨年3月、勤務していたフジテレビを退社し、再びフィギュア界で活動を始めた。解説者として競技の魅力を発信する傍ら、「ジャッジ」といわれる審判員としても活躍。世界選手権に3度出場し、05年グランプリ(GP)ファイナル3位など実績を残した、かつての名スケーターがこのほど「THE ANSWER」のインタビューに応じた。
中野友加里インタビュー第2回、フィギュア人気の裏にある「待機選手問題」とは
元フィギュアスケートの中野友加里さんが昨年3月、勤務していたフジテレビを退社し、再びフィギュア界で活動を始めた。解説者として競技の魅力を発信する傍ら、「ジャッジ」といわれる審判員としても活躍。世界選手権に3度出場し、05年グランプリ(GP)ファイナル3位など実績を残した、かつての名スケーターがこのほど「THE ANSWER」のインタビューに応じた。
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全3回に渡ってお届けする第2回は「中野友加里と考えるフィギュアスケートの魅力」。フィギュア人気の高い日本において、「やる魅力」と「見る魅力」について語り、独自に成り立っている選手とファンの関係性を「パートナー」と表現。そして、フィギュアのさらなる普及、発展に向け、ジュニア指導の現場で増えつつある“待機選手問題”についても声を上げた。
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フィギュアスケート界において、日本は今、競技熱の高い国の一つとして知られている。
3回転アクセルを跳んだ伊藤みどりの登場以降、荒川静香、浅田真央ら多くの女子スケーターが国際舞台で活躍し、男子も高橋大輔、織田信成らが台頭。そして、羽生結弦の出現によりフィギュア人気は最高潮に達し、現在は紀平梨花、宇野昌磨らと共に日本勢を牽引している。そんな今だからこそ、改めて競技の魅力を考えてみたい。まず、フィギュアの「2つの魅力」について、だ。
フィギュアスケートは他のスポーツと同様、「やる魅力」と「見る魅力」が存在している。
「やる魅力」について。3歳でフィギュアを始め、24歳で引退するまで21年間、年に休みが1日もない時期もあったほど、没頭してきた中野さん。「長く続けてこないと分からない部分かもしれませんが……」と前置きした上で、選手目線での魅力を明かす。
「長く続ければ続けるほど、やみつきになる競技なんです。スケートリンクの広さは30×60メートル。あの広い場所で観客席、審判の方々の目線を一身に浴びるスポーツはなかなかない。そして、滑り始めから滑り終わる時まで応援しながら見ていただき、良かった時はスタンディングオベーションで迎えていただける。自分が納得いく演技できて、観客の皆さんから称賛の声をいただけると達成感に変わり、『次もやらなきゃ』『これだからやめられない』という気持ちになる。それが私が続けられた原動力です」
一方で「見る魅力」についてはどうか。
「一つのスポーツでありながら、様々な技術の要素が凝縮されていること。ただ踊って見せているだけじゃなく、ジャンプがあって、スピンがあって、踊りもある。様々な要素がありながら、スケート靴を履いて氷の上を滑るスピードも魅力。あれだけのスピードを出せるのはスケート靴を履いているからならでは。見る人にとっては、そういうところも魅力的になっていると思います」
競技の特徴の一つが「選手とファンの関係」だ。“選手が演技する、ファンが応援するだけ”でなく、フィギュアスケートという競技を一緒に空間を作る「パートナー」のような側面もある。中野さんも現役時代、ファンの存在の大切さを実感してきた。
「特に嬉しかったことは、大きな大会になると、選手の名前が入った垂れ幕が増えることです。作ること自体、特に選手の了承が必要なわけではないので、自分が知らないところで作っていただいている。なので、会場に入って客席を見渡した時、垂れ幕が目に入ると『あ、応援してくれている人がいるんだ』と、すごく会場に親近感が沸くんです。親近感が沸くと、安心してスケートを滑ることができる。味方がいる感じがして、まさに競技の一体感を生む『パートナー』として関係が成り立っていると思います」
特に現役時代、選手ながら感銘を受けた日本人ファンの姿がある。