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【今、伝えたいこと】ちょっと口下手な五輪金メダル候補 フクヒロが「感動を与える」と言わない理由

10代の選手へ、ダブルスのあるべき姿を伝えた【写真:Getty Images】
10代の選手へ、ダブルスのあるべき姿を伝えた【写真:Getty Images】

10代の選手に伝えるダブルスのあるべき姿とは、コロナ禍で沈んだ心境も明かした

 離れた時間が転機となる。後輩とペアを組んだ廣田は、引っ張る立場を知った。「今も苦手ではあるけど、『自分はこうしたい』という気持ちを伝えることの大切さを凄く学んだ」。言わなきゃわからないこともある。自信がなくて出せなかった言葉を勇気に乗せるようになった。

 福島も廣田の良さを痛感する日々だった。新しいペアではイメージ通りに進まない。「あ、ここは廣田だったら決めてくれるな」「廣田なら止めてくれる」。安心感が違った。2人で作り上げたものは大きい。パートナーとの接し方で大切なことを発見した。

「私が自分の意見をずっと言っていて、廣田からの言葉をあまり聞いていなかった。『言ってよ』と思っていたんですけど。あれから『聞いてみよう』という考え方に変わった」

 今でこそコートで輝く阿吽の呼吸。そのスタート地点の「聞く」「伝える」が欠けていた。互いの存在の大きさを知った2人はペア解消から約3か月後、引かれ合うように再結成。久々に同じコートに立った時の気持ちを問われ、福島は「えー、どんなんだったかな」と照れ笑いする。廣田はおっとりとした口調ながら、ちょっぴり前のめりに画面越しの先輩へ思いを打ち明けた。

「私は久々に組めたことが単純に嬉しかったですし、楽しいなって思いました。やっぱり福島先輩とのコンビネーションやパターンが決まると、パートナーの良さを改めて感じました。楽しみながら試合をやっていましたね」

 試合中でも「こうしたほうがいいですね」「今のは自分が行きます」と意思表示。チームに後輩も増え「フランクに喋るようになった」とコート外でも変化があった。バドミントンのこと、それ以外のことも年下にアドバイス。そんな成長した背中に、福島は「頼りっぱなしではなく『自分もやろう』という気持ちが伝わってくる。本当にそこが凄く変わったところかな」と信頼を寄せている。

 ダブルスを組む10代の若い選手たちへ、フクヒロから伝えられることがある。「やっぱりダブルスは1人じゃできない」。当たり前に思えるが、見失いがちな大切なこと。経験に裏打ちされた言葉には自信が見え隠れした。

 福島「『できない』『下手くそ』と思うのではなく、パートナーとして『じゃあ、私がここをカバーするから』『私が取る』と。自分のせいとか、相手のせいとかそういうものではない。1人のミスは2人のミス。そうやって一緒にやってほしいなと思います」

 廣田「どちらかの調子が悪くて、どちらかが良い時がある。どちらも良い時ってほとんどないと思います。片方が悪い時は片方がカバーして、2人で1点を取りに行く。2人で試合に勝ちに行くことが大切。パートナーの調子が良いなら、それに乗っかっていこうとするのもいいこと。でも、パートナーが悪かったら自分がしっかりカバーする。そういう気持ちを2人で作っていければいいんじゃないですかね」

 コロナ禍も2人で乗り越えている。ウイルスの感染拡大の影響で、拠点を置く岐阜の体育館は閉鎖。3月末には東京五輪の1年延期が決まった。何年もかけて合わせてきた舞台が先延ばし。福島は「中止じゃなくてよかった」と思う一方で、率直な胸の内を表現した。

「気持ちの沈みも多少はあった。今年に合わせて準備してきたので、気持ちと体を作っていく部分で『もう1回か』と思いました。それに加えて代表選考レースもあと1年。もうすぐのところで1年延びたので『もう1回か』という気持ちでした。仕方ないと思えたのは開き直りもあります。この状況は誰も予想していなかったことなので、自分だけでなくみんなが同じ状況。そこがポジティブに考えられた理由かなと思います」

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