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【今、伝えたいこと】ちょっと口下手な五輪金メダル候補 フクヒロが「感動を与える」と言わない理由

新型コロナウイルス感染拡大により、スポーツ界はいまだかつてない困難に直面している。試合、大会などのイベントが軒並み延期、中止に。ファンは“ライブスポーツ”を楽しむことができず、アスリートは自らを最も表現できる場所を失った。

バドミントン女子ダブルス日本代表の福島由紀、廣田彩花ペア【写真:Getty Images】
バドミントン女子ダブルス日本代表の福島由紀、廣田彩花ペア【写真:Getty Images】

連載「Voice――今、伝えたいこと」第29回、口下手な東京五輪金メダル候補の言葉

 新型コロナウイルス感染拡大により、スポーツ界はいまだかつてない困難に直面している。試合、大会などのイベントが軒並み延期、中止に。ファンは“ライブスポーツ”を楽しむことができず、アスリートは自らを最も表現できる場所を失った。

 日本全体が苦境に立たされる今、スポーツ界に生きる者は何を思い、現実とどう向き合っているのか。「THE ANSWER」は新連載「Voice――今、伝えたいこと」を始動。各競技の現役選手、OB、指導者らが競技を代表し、それぞれの立場から今、世の中に伝えたい“声”を届ける。

 第29回はバドミントン女子ダブルス日本代表の福島由紀、廣田彩花ペア(丸杉Bluvic)が登場する。「フクヒロ」の愛称で知られ、2019年まで世界選手権で3年連続準優勝。東京五輪で金メダル獲得が期待される中、自他ともに認めるほど口下手な2人が無力感を抱いたコロナ禍で表現したい姿に迫った。

 ◇ ◇ ◇

 何かできることはないかな。

 コロナ禍に置かれ、考える時間が増えた。外出自粛で読書や料理、ランニングなど新たな趣味を見つけた人もいるかもしれない。様々なイベントや中高生の大会が中止となったスポーツ界。“自分のため”から“人のため”にできることの枠を広げた人も多いはずだ。

 とりわけ、トップアスリートからはSNSやYouTubeでトレーニング動画、医療従事者へのメッセージ、中高生の助けになる企画を発信する姿が多く見られるようになった。だが、これらは決して義務ではない。発信が苦手な選手もいる。

「何ができるかって言われたら正直何もできない」

 福島は言葉に詰まりながら、無力感を滲ませた。「暗いニュースが多い中、東京五輪に向けて世の中に発信したいことは?」。難しい質問にさらりとは答えられない。「え~」「う~ん」「なんかこう」「何て言ったらいいんだろう」。慣れないZoomによる30分の取材中、パソコン画面に映るメダル候補は言葉を慎重に選んでいた。言葉に責任を持ち、いろいろなところに気を使って話すのは、優しい人柄の裏返しかもしれない。

 そんな福島とペアを組む1学年下の廣田もまた、「すーっごい人見知り」と自他ともに認める口下手だ。2人にバドミントン人生でぶつかった「最大の壁」を問うと、揃って同じ時期を挙げる。それも口下手が原因だった。

 ともに熊本出身で、幼い頃から互いを知っていた。福島は青森山田高3年時にインターハイでシングルス準優勝、ダブルス優勝の輝かしい実績があった一方、玉名女子高で目立ったものがなかった廣田。同じ実業団に入ったことでペアを結成したが、実力者の先輩に対し「自分でいいのかな」と不安があった。

「最初は本当に福島先輩に頼りっぱなし。自分の意見を言ったこともなかったし、もう話を聞いて『はい』というだけだった」

 試合で得点を取られても「自分が悪い」と決めつけた。リオ五輪出場を逃し、2016年4月にペアを解消。息が合わず、スタッフに勧められて別々の道を歩むことになった。

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