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【今、伝えたいこと】球児に勧める“不安との向き合い方” 打撃職人・和田一浩が野球人生から学んだこと

2000本安打目前で骨折も「それが挫折とは思わなかった」

 日本を代表する強打者として、目標に対するプロセスにこだわり続けた。通算2000本安打まで残り15本に迫った2014年8月、死球を受けて右手舟状骨を骨折。下を向いている暇はなかった。すぐに3週間で実戦に戻ると明確に設定し、どんな治療が有効か調べ尽くして試した。折れた箇所が悪く、ギプスが外れるまで1か月半かかったため復帰は翌年に持ち越しとなったが、ゴールに向かって妥協はしなかった。

「結果的にイレギュラーなこともあるけれど、自分でどうするかという意思を持つことはすごく大事だったんじゃないかと思います。僕の場合は野球が仕事だったので、『どうあるべきか』というのは常に持っていましたし、技術的な部分でも体の部分でも、妥協したくなかったというのが前提としてありました。例えば目標に失敗して挫折しても、次の目標を立てて道を探らなければいけないという気持ちでいたので、それが挫折だとは思っていなかったですね」

 2015年6月、かつて西武で共に戦った伊東勤監督率いるロッテとの交流戦で、目標としていた2000本安打を達成した。球史にその名を刻んだ男は今、コロナ禍の球児たちに何を思うのか。

「高校生だけではなく、中学生も小学生も、いろんな大会が全部奪われているわけですよね。相当な我慢、ストレスは感じている状況だと思いますし、思い切ってやりたいことができないというのは、大人と違って子どもたちは頭だけでは理解できない部分がある。非常に辛い状況が続いているなと思います」

 自身は県岐阜商2年時の89年春、夏の甲子園を経験。球場に足を踏み入れた瞬間は今も覚えている。母校が5年ぶり29度目の出場となるはずだった春のセンバツは史上初の中止に。今月20日には今夏の甲子園と、全49代表(北海道、東京各2校)を決める47都道府県での地方大会の中止も決まった。

「自分が甲子園球場に入ったときにはすごく感動しましたし、ああいったものは体験してみないとわからない部分が大きいと思う。中止になって出られない選手は相当なショック、かわいそうなことだったな……と思います」

 もし自分が3年生の立場なら――。高校生活最大の目標が失われた選手たちに、簡単にかけられる言葉など見つからない。ただ、長い競技生活を経験してきた現在の自分だからわかることがある。夏の大会の中止が発表される前、和田氏は不安との向き合い方についてこう語ってくれた。

「不安な気持ちを拭えというのは難しいと思うんですけど、自分たちでどうにかできる問題ではないですよね。できることに取り組むしかない状況なので、不安というのはわかるんですけれど、できることを目一杯やらないと(コロナに)振り回されてしまったという気持ちになってしまうと思う。不安は横に置いておいて、できることを目一杯やるのがベストを尽くすということではないかと思います」

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