【#キミとONETEAM】「家にいれば家族を助けられる。この時間を家族でいい方向へ」―元日本代表・大野均
「エディーさんに教わったのは準備の大切さ」、今はラグビーを楽しむための準備期間
自分もすごくきつい練習の時に、周りの選手たちもきつい顔をしているのを見て、「ああ、きついのは自分だけじゃないんだ」と感じて頑張ることができる。そうやってきつい練習を乗り越えることができたと何度も思っている。それが団体スポーツのいいところでもあります。自己犠牲の精神ではないですが、自分がいま我慢することによって、将来的には世の中が良くなるという気持ちに切り替えてもらえたらいいなと思います。
自分はきつい時間もいつかは終わると思ってやっていました。それこそ2015年W杯前の宮崎合宿は本当にきつかった。「W杯まで160日」とチームルームのホワイトボードに書いてあって、1日ずつカウントダウンしていきました。最初は「160」という数字を見た時に気が遠くなる思いだったのですが、やはりそれを乗り越えて南アフリカに勝つことができて、W杯でも3勝できた。
こういう経験から「きついこともいつかは終わる」「きついのは自分だけじゃない」という心持ちで、いろんなことを乗り越えられるようになりました。本当に先が見えないかもしれないけど、いつかはこの事態も終わると信じることが大事。いかにポジティブにこの時間を捉えるかです。
エディーさんから教わったのは、やはり準備が本当に大事なんだということ。エディーさんがいつも言っていましたし、自分が実際に経験させてもらって、準備がすごく大事なんだなと教えてもらいました。いまの状況は、またラグビーを楽しめるようにする準備期間としてとらえるのもいいかもしれません。
長く日本代表にいたから得たものとしては、努力し続けることが自分をよりよい方向に持っていける唯一の方法だということ。これは日本代表期間中に感じました。そして常に謙虚(けんきょ)であること。これは大事なことだと思います。
外に出られない、友だちと遊ぶことができない、そういうふうにネガティブな気持ちになることがあるかもしれないけど、逆に家族と一緒にいられる、家族を助けることができる。前向きな考えを持ちながら今の状況を過ごしてほしいです。必ずこの事態が終わり、また友達とスポーツをしたり、遊んだりできる時が必ず来る。その時に体調が悪かったら思う存分できないわけですから、その時に向けてしっかり自分のことを守ってほしいなと思います。
【#きょうのトライ「料理に挑戦してみてほしい。お手伝いをしよう」】
家族といる時間が多くなるので、しっかりとお父さん、お母さんのお手伝いをしてほしいなと思います。本当に小さなことでもいいです。家にいてもごはんを食べないといけないので、料理に挑戦してみてほしいなと思います。今後、コロナが終息した後も料理が楽しくなってくれれば。あとはお父さん、お母さんも子どもたちがお手伝いをしてくれることで、いろんな負担も少なくなるだろうし、この時間を家族でいい方向に持っていけたらいいなと思います。
自分は料理が好きで、いまはふだんできない手の込んだものを作っています。最近作ったのはアクアパッツァです。イサキという魚をまるまる1ぴき買ってきて、それに塩をふって、フライパンで焼いて、オリーブオイルとお湯をかけて。アクアパッツァを日本に広めた日高良実シェフの料理を食べたことがあり、すごくおいしくて感動したのを覚えていたので、自分でもやってみようと思いました。日高シェフほどにはいかないですけど、おいしくできたと思います(笑)。
■大野 均(おおの・ひとし)
1978年5月6日生まれ、福島県郡山市出身。192センチ、105キロ。清陵情報高では野球部。日大工学部進学後にラグビーを始め、大学卒業後に東芝ブレイブルーパス入り。04年に日本代表初キャップ。2007年から3大会連続でW杯に出場し、代表通算98キャップは歴代最多。現所属は東芝ブレイブルーパス。ポジションはロック。
(次回は早大ラグビー監督・相良南海夫さんが登場)
(THE ANSWER編集部・浜田 洋平 / Yohei Hamada)