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最速150kmを投げる自分が実験台 元早実エースが歩む「投球戦略家」という第二の人生

自らが実験台、生徒に遠回りをさせない内田流「失敗は自分がします」

 選手時代に試行錯誤、取捨選択を繰り返した日々が経験となって指導に繋がる。脳みそをフル回転させる習慣は、今でも変わらない。受講者の中には「何がわからないかがわからない」という選手もいる。最近、内田が工夫しているのが左投げをやってみることだ。

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「左で投げたらうまくいかないじゃないですか。そうすると、投げられない人の気持ちがわかる。そしたら『どうやって投げようか』『こう投げるためにはこれをどう言葉にするのか』など考える。みんながみんな同じ課題ではありませんが、一度うまくいってしまうと、うまくいかない人の気持ちがわからなくなってしまう。だから、うまくいかないことをやってみてから、自分で伝えています」

 自分自身が実験台。「選手にやってもらう練習は、とりあえず全て自分で実験してからやる」と決めている。トライ&エラーを繰り返し、効果的なものを提供。選手が一つの技術をどうしたら身につけやすいか考える。指導で生かされるのがラプソードとハイスピードカメラだ。データをかみ砕いて伝えることで「ここが変わったよって言えば、中身がマッチして選手も自信がついてくる」と手応えを感じている。

 12月以降、複数回指導した15~25歳の選手は14人。未だ球速アップできていない2人を除き、約3か月で平均4.0キロアップに成功した。ある選手は8.1キロアップの149.6キロに。データ、数値の意味を丁寧に紐解いて伝えたことで、ひと冬で大幅な進化を遂げた。

 内田の今季最速は147キロ。常時、145キロ前後は計測し「ちゃんと練習したら今年は150キロを超えると思う」と自信を持つ。自分の練習に専念すれば、153キロ程度を出せる感触があるという。自らを実験台にし、選手に“生きた教材”を届けるためにも「最速の151キロ以上を出したい。自分のラプソードで測定した中では、今のところ自分が一番速いんですよ。『ちゃんと投げられているよ』という形でずっとありたいですね」と笑った。

 理論の土台は確立してきたが、日々、常識が変わっていく奥深き投球の世界。「常に新しい発見がある。常に過去の自分はもう少しできたかなと思うことの繰り返しです。今の若い子たちが『これを知れたら羨ましいな』と思うことをしっかり伝えること。そこがメインなのかなと思いますね」。自分はケガで遠回りしたからこそ、受け持つ選手には最短距離を歩んでほしいという願いがある。

「できるだけ選手がエラーをしないようにしたい。失敗して学ぶこともあるかもしれないけど、遠回りしないんだったらしないでいいのかなって。自分自身がケガをして学んだ部分があるから、失敗して気づくこともあると思う。でも、ケガはしない方がいいし、しないで気づける方がいい。

(指導者の目標として)プロ野球選手を何人か出すというのもいいですが、プロ野球選手になることが幸せとは限らない子もいるかもしれない。それは自分のエゴになるかもしれない。でも、成功体験って絶対に楽しいと思う。もしかしたら、プロに行ってもっと活躍していたかもしれない子が埋もれてしまうケースもあると思うんですけど、そういう子を極力伸ばせるようにするのが目先の目標かなと思います」

 自ら無限のトライ&エラーを繰り返す。導き出した知識を伝えるため、1月から野球データやトレーニングの専門家4人とオンラインサロン「NEOREBASE」を開設した。有料会員に対し、オンライン上で投球理論、ラプソードなどのデータ活用法、トレーニング論を提供、助言している新しい形の投球指導だ。米大リーグ・カブスのダルビッシュ有、ソフトバンク・千賀滉大、DeNA・櫻井周斗、中日・岡野祐一郎と竹内龍臣というプロの投手も加入し、話題を集めている。

「エラーは自分がします」

 ユニフォームは脱いだが、白球を手放すことはない駆け出しのピッチング・ストラテジスト。一人でも多くの選手を成功体験に導くため、今も剛腕を振り続けている。

(12日に「ダルビッシュ、千賀も加入 話題のオンラインサロン『NEOREBASE』とは」を掲載)

(THE ANSWER編集部・浜田 洋平 / Yohei Hamada)

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