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選手を陰で支えるフィジカルトレーナー その役割とアプローチの“極意”とは?

詳細な見立てをして体の動きや変化を自覚できると、メニューの「信頼度」もアップ

 しかし、残念ながらあまり感謝されることがありません(笑)。故障を治す仕事は一目瞭然ですが、動作の改善、ましてや障害予防となると結果が分かりにくい。「中野さんのトレーニングは本当に効いているの?」などと言われることもしばしばです。

 ですから、選手や監督には、何のためにこのメニューをやるのか、いつ頃、どう体が変化していくのかを明確に、そして本人がイメージできるようシンプルに道筋を立てて伝える工夫をしています。ただ、トレーニングメニューを組んで課すだけでは、選手のやる気にもつながらず、上手くいきません。最初にスペシフィック(詳細)な見立てをし、その通りに体や動きの変化を自覚できると、選手のモチベーションが上がり、メニューの信頼度も上がります。

 近年では青学大の駅伝チームが連覇を達成したことで、彼らに指導した体幹トレーニングが話題になりました。でも、私が指導を始めた当初は、「安定するとフォームが良くなり、走りも良くなる」と伝えていたものの、1回2回では何も変わらないので、原晋監督も半信半疑だったと言っています。「走りが変わってきた」「腕の振りが良くなっている」と監督が気づいたのは、最初のトレーニングから4か月後、8月の夏合宿のこと。その頃には真剣に取り組んでいた選手はタイムも上がり、体幹トレーニングが必要とされた意味も理解できたようです。

 スポーツの結果は、積み重ねてきたトレーニングの量や質、モチベーション、経験、環境など様々な要因が重なり導かれるもの。ゆえに、フィジカルトレーナーの仕事は非常に評価されにくい。それでも体のことをあれこれ考える日々に、面白さとやりがいを感じます。人の体を「ゼロからプラスにする」。私はこの仕事が大好きです。

【了】

長島恭子●文 text by Kyoko Nagashima


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中野ジェームズ修一

スポーツトレーナー

1971年、長野県生まれ。フィジカルトレーナー。米国スポーツ医学会認定運動生理学士(ACSM/EP-C)。日本では数少ないメンタルとフィジカルの両面を指導できるトレーナー。「理論的かつ結果を出すトレーナー」として、卓球・福原愛、バドミントン・藤井瑞希らの現役時代を支えたほか、プロランナー神野大地、トランポリン競技選手など、多くのトップアスリートから信頼を集める。2014年以降、青山学院大駅伝チームのフィジカル強化指導を担当。東京・神楽坂に自身が技術責任者を務める会員制パーソナルトレーニング施設「CLUB100」がある。主な著書に『世界一やせる走り方』『世界一伸びるストレッチ』(サンマーク出版)、『青トレ 青学駅伝チームのコアトレーニング&ストレッチ』(徳間書店)、『医師に「運動しなさい」と言われたら最初に読む本』(日経BP)などベストセラー多数。

長島 恭子

編集・ライター。サッカー専門誌を経てフリーランスに。インタビュー記事、健康・ダイエット・トレーニング記事を軸に雑誌、書籍、会員誌で編集・執筆を行う。担当書籍に『世界一やせる走り方』『世界一伸びるストレッチ』(中野ジェームズ修一著)など。

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