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「整いすぎた環境」はマイナスに働く ドイツ人指導者が説く、子供の成長を促す“向き合い方”とは

ドイツサッカー連盟公認A級ライセンスを持ち、20年以上にわたって現地で育成年代の選手を指導してきた中野吉之伴氏が、「THE ANSWER」に寄稿する不定期連載「サッカーと子育て論」。ドイツで子供たちを日々指導するからこそ見える、日本のスポーツ文化や育成年代の環境、子育てに対する考え方の違いなどについて迫る。今回はドイツの指導者講習会で知り合った盟友で、プレミアリーグでの監督経験もあるヤン・ジーベルト氏の言葉から、子供たちの成長につながる指導者側の最適なアプローチに迫っている。

ハダースフィールド監督としてプレミアリーグで指揮を執ったヤン・ジーベルト氏(中央)。育成年代の指導経験も豊富だ【写真:Getty Images】
ハダースフィールド監督としてプレミアリーグで指揮を執ったヤン・ジーベルト氏(中央)。育成年代の指導経験も豊富だ【写真:Getty Images】

連載「ドイツ在住日本人コーチのサッカーと子育て論」

 ドイツサッカー連盟公認A級ライセンスを持ち、20年以上にわたって現地で育成年代の選手を指導してきた中野吉之伴氏が、「THE ANSWER」に寄稿する不定期連載「サッカーと子育て論」。ドイツで子供たちを日々指導するからこそ見える、日本のスポーツ文化や育成年代の環境、子育てに対する考え方の違いなどについて迫る。今回はドイツの指導者講習会で知り合った盟友で、プレミアリーグでの監督経験もあるヤン・ジーベルト氏の言葉から、子供たちの成長につながる指導者側の最適なアプローチに迫っている。

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 子供たちの成長に大切なことってなんだろう?

「安心」「安全」「基本的人権の尊重」は最低限守らなければならない条件であるのは言うまでもない。それを遵守したうえで、どのような環境を作り、どのような取り組みをすべきかを考えるのが、教育者や指導者がすることだ。

 ブンデスリーガのマインツで育成指導者統括ダイレクターを務めた後、U23監督として活躍するヤン・ジーベルトとディスカッションをしたことがある。ジーベルトは僕にとってドイツサッカー協会A級指導者講習会の盟友で、ブンデスリーガの下部組織やドイツの年代別代表でコーチ・監督を務め、2019年にはハダースフィールドの監督に就任しプレミアリーグの舞台での指導経験もある。

「ドイツではみんないいサポートを受けている。幸せなことにね。みんな居心地良く生活することができるし、社会としてそれを目指している。ブンデスリーガの育成アカデミーでプレーしている選手は、上手くいったらプロ選手になることもできる。でもそれ以外にも大学へ進学する道もあるし、職業研修を受けることだってできる。それは社会的に見て、とても大切なことなんだ」

 誰もがプロ選手になれるわけではない。プロ選手になっても長くプレーできる選手は限られている。一流選手としてスターダムにのし上がるのは、一握り中の一握り。そこまでの選手になっても、セカンドキャリアまで上手くいくとなると天文学的な数字になったりするかもしれない。

 だが、それは悲劇だ。だからこそ、その事実を認め、その中でジーベルトが言うように社会的に子供たちが選手としてだけではなく、1人の人間としても成長し、成熟するようにサポートすることは極めて重要なことなのだ。

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中野 吉之伴

1977年生まれ。ドイツサッカー連盟公認A級ライセンスを保持する現役育成指導者。ドイツでの指導歴は20年以上。SCフライブルクU-15チームで研鑽を積み、現在は元ブンデスリーガクラブであるフライブルガーFCのU12監督と地元町クラブのSVホッホドルフU19監督を兼任する。執筆では現場での経験を生かした論理的分析が得意で、特に育成・グラスルーツサッカーのスペシャリスト。著書に『サッカー年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)、『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)がある。WEBマガジン「フッスバルラボ」主筆・運営。

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