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子供に必要なのは“習う”ではなく“遊ぶ”経験 大人に邪魔されない「公園サッカー」で育まれる力

ボール遊び禁止の公園が多い日本の現状

 静岡県浜松市で、公園サッカープロジェクトをスタートさせた方がいる。細野亜里砂さん。お子さんが地元の少年団でプレーしていたが、少しずつ窮屈さを感じることが増えてきて、今は少し休んでいるという。

 そんな細野さんが息子と同級の友だちなどを誘ってボールが蹴れる公園でのびのびサッカーをしようと思い、始めた。サッカーや外遊びは好きだから。

 毎回みんなで熱くストリートサッカー!……とはならず、時に縄跳びをしたり、鬼ごっこをしたり、ボールを蹴りつつも、遊具で遊んだり、壁に登ったり。持参したミニゴールがほとんど使われずという時もあるが、「雨がひどくなってきたから帰ろう」という時でも、「もっと遊びたい!」という声が聞こえる。

 今の子供たちには、サッカー以外にもゲームやスマホといった強敵がたくさんあったり、加えて小さい頃からの習い事がいくつもある。「何かをしなきゃいけない」ということを何も考えずに、外で遊べる環境がそもそも少ない。

 お父さん、お母さん、親戚、近くの友だち、たまたま公園に来ていた家族連れ。

「一緒に遊びませんか?」
「一緒にサッカーしてもいい?」

 そんな声掛けで世界が広がっていく。どんどん広がっていく。知らない子供同士でも、ゲームが始まればみんな仲間だ。サッカーの素晴らしいところって、そこなんだよなと思うのだ。汗をいっぱいかいて、夢中になってボールを追いかけて、ゴールを喜んで、失点を悔しがって。そんな取り組みをする人が増えてきたら素敵だなと思うのだ。サッカークラブで、サッカースクールでプレーするからサッカーなのではない。

 1つのボール、2つのゴール、2つのチームがあればサッカーだ。

 なのに、日本では公園でボールを蹴れない、キャッチボールができない場所がとても多い。残念で仕方がない。子供たちが、子供たちの世界を持てる場所を、大人が守らなくてどうする。クレームが入ることもあるだろう。でも、そのクレームをそのまま受け入れてしまうのはいかがなものか。

「子供たちの成長には、外で思う存分遊べる場所がとても大切なんです。私たちが守らなければならない大切な環境なんです」

 そう言って子供たちのために戦ってほしいものだ。

(中野 吉之伴 / Kichinosuke Nakano)

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中野 吉之伴

1977年生まれ。ドイツサッカー連盟公認A級ライセンスを保持する現役育成指導者。ドイツでの指導歴は20年以上。SCフライブルクU-15チームで研鑽を積み、現在は元ブンデスリーガクラブであるフライブルガーFCのU12監督と地元町クラブのSVホッホドルフU19監督を兼任する。執筆では現場での経験を生かした論理的分析が得意で、特に育成・グラスルーツサッカーのスペシャリスト。著書に『サッカー年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)、『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)がある。WEBマガジン「フッスバルラボ」主筆・運営。

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