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「勝つ」と選手に言わず日本一に 明大ラグビー部と苦節5年、こだわる鍋料理に「学生スポーツ」の意義

2期4年を過ぎた5年目…「もう1年」続投を決めた理由とは

 この苦しみながらも充実したシーズンで、監督として4年目が終わった。先に説明したように、原則の2期4年という監督任期が過ぎたことになったが、もう1年の続投を決めたのは何故だったのだろうか。

「確かに明治の場合は2年2期が一つの目安でした。なので4年目が始まった時には、自分自身で、この先どうしようかと考えていました。ただ、いまのご時世で、OBの中からすんなり適材の指導者を見つけるのは簡単じゃない。高野彬夫には目星を付けていたのですが、彼はまだ6月にHCに就任したばかりだった。だから、1年以上は一緒に伴走して次に繋げたいと考えたんです。4シーズン目が終わる前くらいに、OB会にもそういう相談をしたんです。後は、リコー側が(5年目を)了承してもらえるかでした」

 最終的にはOB会、出向元のリコーも理解を示してくれた。「任期5年」と書いてきたが、神鳥監督自身は1年目が6月からの指揮だったこともあり1年の延長には前向きだったことで、2025-26年シーズンの続投が決まった。

【5年目/2025年シーズン】
対抗戦:6勝1敗(1位) 大学選手権:決勝〇22-10早稲田

「個人的には、木戸(大士郎)主将(現BL東京、No8)ら前シーズンの4年生たちが残してくれたメンバーが結構いました。だから、それをベースにしっかり上積みしていければ十分狙えるチームだと思っていましたね」

 前年度の最終戦となった帝京大との大学選手権準決勝のメンバーをみると、3年生以下の選手9人が先発出場していた。その中に、HO西野帆平、SO伊藤龍之介、FB竹下仁吾、このコラムでも紹介したFL最上大尊という学生トップのポテンシャルを持つ選手がいたことで、新シーズンの戦力面での期待は大きかった。

 だが、準公式戦と位置付けられる春シーズンの関東大学春季大会では、自信を持って挑んだ帝京大戦を0-35とよもやの零封負け。対抗戦開幕前の8月には、未成年者を含む部員の飲酒問題が発覚するなど不祥事も起こした。期待度からすると“順風”とは言えない状態で秋の対抗戦を迎えると、開幕の筑波大戦を24-28で落とすと、伝統の慶應義塾大戦は24-22で乗り越えたものの、相手の判断ミスがなければ敗れていた内容だった。

 この敗戦に等しい辛勝の後に、選手たちがより“腹を割った”ミーティングを繰り返してチームも変化したことは、大学選手権優勝までの報道で何度も取り上げられた。だが、取材者として25年シーズンの戦いぶりを見てきた中で、このチームが大学日本一まで駆け上がれたプレー面での転機は、帝京大戦だったと考えている。7-10と3点ビハインドで迎えた後半20分過ぎ。敵陣でのPGも十分射程だった位置でのPKで、チームはゴールを狙わずタッチキック→ラインアウトからFW戦でトライを奪い取った。

 伝統的にFWに強みを持つ明大だが、この10年近くはBKにもトップ選手が集まり、逆にFW戦ではライバルの早稲田、帝京にも接点、スクラムで重圧を受けることも珍しくなかった。この日のロースコア、僅差の展開では、残り時間も踏まえて射程距離のPGで同点という選択もあったが、CTB平翔太主将は迷わずタッチキックからのFW勝負を選び、トライを獲り切った。どんなに時代が変わり、スタイルの変容が求められても、自分たちの拘るもの、矜持を持って戦う姿勢をブレずに貫いた選択に、期待される中で究極の結果には辿り着けなかった「これまで」にない意志と逞しさを感じ取った。

 神鳥体制の5シーズンで対抗戦では初めて帝京を21-17で下すと、勝ち負けを繰り返してきた早稲田もFWのフィジカルで優位に立ち25-19で乗り越えた。その勢いのまま大学選手権も勝ち上がり、決勝では「連勝は出来ない」と言われてきた早稲田との再戦も制してチームとして7シーズンぶり、神鳥監督にとっては初めての頂点に登り詰めた。

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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