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大人が限界を決めるのは「物凄く危険」 卒業後に飛躍、U22日本代表MFが証明した“堀越流”の成果

試行錯誤を繰り返すボトムアップは「カメ」型の指導法

 それにしても日野の卒業後の成長の加速ぶりは、佐藤にとっても驚きだった。

「改めて大人が勝手に評価を下し限界を決めてしまうのは物凄く危険だな、と思いました。日野だけじゃない。もっともっと他にも大きな可能性を秘めている選手はたくさんいる。でもそれを大人がやり方や考え方を押しつけて、成長を邪魔してしまっている組織が少なくない。だから僕らは、日野のようにブレずに目標へ向かって突き進む選手たちを見守り、必要な時に手を差し伸べられるように準備をしているんです」

 ボトムアップ方式での11年間の歴史が、すべて順風満帆だったわけではない。むしろ「上手くいかないことのほうが多かった」と佐藤は振り返るが、「今があるのは、積み重ねてきたからこそ生まれた成果であり、彼らの可能性が引き出された結果」だと見る。

 指導者が方向性を示して牽引するトップダウンが即効性の高い「ウサギ」型だとすれば、選手たちが主役となり試行錯誤を繰り返すボトムアップは「カメ」型なのだろう。だが育成過程で充実した日々を送りエネルギーを溜め込んだカメは、社会に出ると一気に成長を加速していく。それを最近の堀越の卒業生たちは立証しているのかもしれない。(文中敬称略)

(加部 究 / Kiwamu Kabe)

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加部 究

1958年生まれ。大学卒業後、スポーツ新聞社に勤めるが86年メキシコW杯を観戦するために3年で退社。その後フリーランスのスポーツライターに転身し、W杯は7回現地取材した。育成年代にも造詣が深く、多くの指導者と親交が深い。指導者、選手ら約150人にロングインタビューを実施。長男は元Jリーガーの加部未蘭。最近、選手主体のボトムアップ方式で部活に取り組む堀越高校サッカー部のノンフィクション『毎日の部活が高校生活一番の宝物』(竹書房)を上梓。『日本サッカー戦記~青銅の時代から新世紀へ』『サッカー通訳戦記』『それでも「美談」になる高校サッカーの非常識』(いずれもカンゼン)、『大和魂のモダンサッカー』『サッカー移民』(ともに双葉社)、『祝祭』(小学館文庫)など著書多数。

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