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普通の高校生は「ビビッてできない」 土壇場で自ら決断、堀越サッカー部監督が感嘆した選手の主体性

土壇場の同点劇を生んだ主将の采配

 今年のチームは、まず4-3-3で戦うことを決めてシーズンをスタートした。このフォーメーションの原理原則を全員が理解し、それぞれにどんな役割があるのか整理して試合に臨んできた。

「でもこっちがやりたいことを相手が止めに来るのがサッカー。そういう時に、どうするのかな?」
「やりたいことだけをやり続けても、ゲームを変えることはできない。勝っている時に逃げ切ったり、負けている時に変化を起こしたりする方法も持っておきたいよね」

 そうやって佐藤は、ファシリテーター(中立の立場で進行を促す)として選手たちに投げかけていく。夏休みには、佐藤の提言で3バック(3-4-3)や4-4-2も試みた。

 そしてこうした蓄積を経て全国高校サッカー選手権東京都予選の決勝では、ピッチ上の中村健太主将が見事な采配を的中させた。

 4-3-3でスタートした堀越は、後半に入り修徳に先制点を許す。すると中村主将は、182センチのセンターバック森奏を最前線に上げ3-4-3にシフトした。佐藤が解説してくれた。

「堀越では試合前のミーティングで、ゲームプランをすべて記して共有します。どんな展開になったらこうする、というシナリオをあらかじめ提示してあるので、僕も3-4-3へシフトする可能性があることは知っていました。しかし僕の考えでは、別のFWやDFを入れないと形を変えることはできなかった。人を代えずにシステムを動かしたのは、完全に中村健太のオリジナルです」

 結局、このシステム変更が土壇場の同点劇を生み出し、延長戦に入ると再び主将の判断で4-3-3に戻した。

「夏に3バックのやり方を提示したわけですが、それを健太は引き出しに入れておいて、いざという時にきちんとメリットとデメリットを考えて採用した。しかもあの土壇場で冷静に試合に落とし込み、仲間もそれにしっかりと応え表現した。そんなこと普通の高校生ではビビッてしまって絶対にできませんよ」

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加部 究

1958年生まれ。大学卒業後、スポーツ新聞社に勤めるが86年メキシコW杯を観戦するために3年で退社。その後フリーランスのスポーツライターに転身し、W杯は7回現地取材した。育成年代にも造詣が深く、多くの指導者と親交が深い。指導者、選手ら約150人にロングインタビューを実施。長男は元Jリーガーの加部未蘭。最近、選手主体のボトムアップ方式で部活に取り組む堀越高校サッカー部のノンフィクション『毎日の部活が高校生活一番の宝物』(竹書房)を上梓。『日本サッカー戦記~青銅の時代から新世紀へ』『サッカー通訳戦記』『それでも「美談」になる高校サッカーの非常識』(いずれもカンゼン)、『大和魂のモダンサッカー』『サッカー移民』(ともに双葉社)、『祝祭』(小学館文庫)など著書多数。

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