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高校サッカー選手権は「選手のためにある」 ボトムアップ部活で2年ぶり全国、堀越監督が貫く信念

決勝では選手自らが2度のシステム変更

 しかし、それからわずか6日後に行われた東京都Bブロック代表決定戦で、堀越は佐藤監督が「今年のベストゲーム」と手放しで称賛するパフォーマンスを引き出した。

「序盤から1年間やりたかったことができている。これで結果がついてこなかったら嫌だな……」

 テクニカルエリアの佐藤はそんなことを考えながら、果敢に主導権を握り戦う選手たちを見ていた。

「とにかく選手の冷静さが光った試合だった」

 あくまで主人公の選手たちを補佐する立場で、後押ししてきた監督が述懐する。

「選手たちは試合中に2度ほどシステムを動かしている。先制されても慌てずに今まで試したことのない3-4-3に踏み切り、同点に追いつき延長戦に入る前には再び4-3-3に戻しています。それをもし僕が『やるよ』と変更を促していたら、逆に全体に浸透するまでに時間がかかり空中分解して終わっていたかもしれない。あの大舞台で相手を見ながら対応しゲームを持ってくる。本当に凄いな、と思いましたよ」

 終了間際の土壇場で追いついた堀越は、PK戦を制し2年ぶりに全国選手権の舞台に帰って来た。ちょうど堀越にとっては創立100周年のメモリアルイヤーだった。(文中敬称略)

(加部 究 / Kiwamu Kabe)

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加部 究

1958年生まれ。大学卒業後、スポーツ新聞社に勤めるが86年メキシコW杯を観戦するために3年で退社。その後フリーランスのスポーツライターに転身し、W杯は7回現地取材した。育成年代にも造詣が深く、多くの指導者と親交が深い。指導者、選手ら約150人にロングインタビューを実施。長男は元Jリーガーの加部未蘭。最近、選手主体のボトムアップ方式で部活に取り組む堀越高校サッカー部のノンフィクション『毎日の部活が高校生活一番の宝物』(竹書房)を上梓。『日本サッカー戦記~青銅の時代から新世紀へ』『サッカー通訳戦記』『それでも「美談」になる高校サッカーの非常識』(いずれもカンゼン)、『大和魂のモダンサッカー』『サッカー移民』(ともに双葉社)、『祝祭』(小学館文庫)など著書多数。

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