「非カリスマ型」森保一監督の強みとは? W杯日本代表に見る強固な組織作りのヒント
ベスト8の目標にはたどり着けなかったものの、カタール・ワールドカップ(W杯)で下馬評を覆す躍進を遂げた日本代表。苦戦が予想されながらも、日本はなぜドイツ、スペインを撃破するアップセットを演じられたのか。日本サッカー協会公認指導者S級ライセンスで講師を務め、Jリーグトップチームやサッカー年代別日本代表への「チームビルディング」の指導を行う福富信也氏に、独自の視点から森保ジャパンの躍進の理由を探ってもらった。(取材・構成=原山 裕平)
「チームビルディング」の専門家・福富信也氏が見たカタールW杯日本代表の躍進
ベスト8の目標にはたどり着けなかったものの、カタール・ワールドカップ(W杯)で下馬評を覆す躍進を遂げた日本代表。苦戦が予想されながらも、日本はなぜドイツ、スペインを撃破するアップセットを演じられたのか。日本サッカー協会公認指導者S級ライセンスで講師を務め、Jリーグトップチームやサッカー年代別日本代表への「チームビルディング」の指導を行う福富信也氏に、独自の視点から森保ジャパンの躍進の理由を探ってもらった。(取材・構成=原山 裕平)
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一般的に、チームスポーツで議論されやすいのは技術・戦術的な部分です。日々のトレーニングも技術・戦術的な確認に多くの時間を割きます。一方で、選手のマインドセットや一体感の醸成については、これまであまり議論されてきませんでした。私は、技術・戦術的な部分を「やり方」、マインドセットや一体感、つまりチームの価値観に関わる部分を「在り方」と表現しています。「やり方」は相手によっては通用しないことが多々あります。とりわけ格上相手には、上手くいかないことが多いでしょう。しかし、「在り方」は自分たち次第。格上相手にも貫ける部分です。
実は負けた後の姿こそが、チームの本当の姿だと思っています。困難や葛藤への向き合い方など、「チームとしての価値観=在り方」が確立されていないと、負けた時に愚痴、不満、感情の吐き捨て、文句、犯人探し、黙り込みが起きます。それはチームの決定事項に対して、メンバーの納得感が低かったからだと思います。カタールW杯でのドイツは、初戦で日本に負けた後に不協和音が出てきました。在り方が確立されていないと、上手くいかない時に不満が爆発するものです。
一方で在り方が確立されているチームでは、仮にチーム内で意見が分かれたとしても、困難や葛藤さえもパワーに変えようとする姿勢を持っているため、対話を重ねて納得解を導き出そうとします。そのうえで負けたのなら、悔しさこそあれど、メンバー同士お互いに称え合えるはずです。森保ジャパンに関して言えば、敗戦後の振る舞いを見る限り、間違いなく後者であったと言えます。そして、その在り方こそが日本代表の躍進の1つの要因だったと考えています。
森保監督が率いた日本代表は、フラットな関係性が築かれていたと推察されます。監督がすべての物事を独裁的に決めるのではなく、みんなが当事者意識を持って率直に言い合える集団だったのではないでしょうか。そして、意見が食い違ったとしても、化学反応を起こす力があったように感じます。