「あなたならできる」で子供は育つ 杉山愛の母が語る、トップアスリートの育て方
トップアスリートの親・指導者に共通する言葉「あなたならできる」
――杉山さんがご覧になってきた良いアスリートは、そのように良い親や指導者に巡り会えてきたということでしょうか?
「そうですね。あと大きなターニングポイントになるのが、子供を信じきれるかどうか。『あなたならできる』という言葉は、トップに行くアスリートは全員言われてきたことだと感じました。『あなたならできる』というのは、『あなたなら金メダルを取れる』ということではありません。あなたなら、持っている力・ポテンシャルを全部出しきれるということを信じて、応援しているんだと思います。選手も『この人、この試合に勝つ』というよりも、自分がこれまでにやってきたこと、持てる力を全部出しきった時に『やりきった』と感じられるのだと思います。そこが、多くの成功したアスリートに共通しているところだと思います」
――子供の頃は多くの選手がトップアスリートを目指しますが、様々な理由により、それが叶わない人たちも出てきます。その時には、どのような考え方や姿勢が求められるのでしょうか?
「そこは常に自分を客観的に見て、目標を修正することだと思います。それは良い結果が出ている時も同様で、次々に新しい目標を設定する力は求められます。例えば、最初は世界を目指していたアスリートもそれが困難な現実が見えてきたら、現状を受け入れることが必要ですよね。その時に大切なのが、自分がスポーツをやっている価値を、どうとらえているか。金メダルを取ることだけが価値である人は、難しくなってくると思います。
私が子供の頃から見ていた選手に、今アメリカの大学テニス(NCAA)で活躍している足立真美という子がいます。彼女は17~18歳になった時に、『まだプロでやっていけるかどうか分からない』と言っていました。そこで彼女に何をやりたいか聞いたら、『会計士の勉強をしたい。テニスは凄く楽しいけれど、他のことにも興味がある』ということでした。アメリカの大学も考えているというのでTOEFLを受けさせたのですが、全然点数が足りない(苦笑)。でもそこからの半年ほどで、彼女は猛勉強をしました。あそこまでやれる子はそうそういないだろうというほどに努力し、きちんと点数も足りてアメリカの大学に入学したんです。その時も私は『こうしなさい』とは言わず、彼女のやりたいことを聞いてガイダンスしました」