“高校野球らしくない”指導でセンバツ有力 元巨人・佐藤洋監督が変えた東北高の練習風景
昨年の秋季東北地区高校野球宮城県大会決勝で、東北高が仙台育英高を破り宮城の頂点に立った。昨夏に甲子園での東北勢初優勝を成し遂げた強敵に土をつけると、勢いそのままに東北大会でも準優勝。今春の選抜高校野球大会への12年ぶりの出場が有力視されている。その東北高を昨年8月から率いるのが、OBで元巨人の佐藤洋監督(60歳)だ。「子どもたちに野球を返す」をテーマに掲げ、高校野球界に一石を投じる指揮官の思いに迫った。(取材・文=川浪 康太郎)
東北高校野球部・佐藤洋監督インタビュー第1回
昨年の秋季東北地区高校野球宮城県大会決勝で、東北高が仙台育英高を破り宮城の頂点に立った。昨夏に甲子園での東北勢初優勝を成し遂げた強敵に土をつけると、勢いそのままに東北大会でも準優勝。今春の選抜高校野球大会への12年ぶりの出場が有力視されている。その東北高を昨年8月から率いるのが、OBで元巨人の佐藤洋監督(60歳)だ。「子どもたちに野球を返す」をテーマに掲げ、高校野球界に一石を投じる指揮官の思いに迫った。(取材・文=川浪 康太郎)
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雪の舞う12月中旬、東北高校泉キャンパス(仙台市)に足を運んだ。ここには硬式野球部のグラウンド、室内練習場、寮がある。
この日、練習が行われていた室内練習場を覗くと、ユニホームではなく各々が所有するジャージやTシャツを着た選手たちがバットを振っていた。髪型も様々で、丸刈りは見当たらない。室内には邦楽のBGMが大音量で流れている。
「ヒロシさん」
練習の合間、選手たちは監督にそう声をかけ、野球や学校生活のことについて相談する。あまりにも“高校野球らしくない”練習風景に、圧倒された。
“高校野球らしさ”を明確に説明するのは難しいが、高校野球界では指導者が選手に統一感や厳格さを求めるケースは少なくない。甲子園を目指すような強豪校であれば、なおさらだ。
東北高は春夏通算41回の甲子園出場を誇る、県内屈指の強豪校。1904年創部で伝統もあり、ダルビッシュ有投手(パドレス)をはじめプロ野球選手も多数輩出している。佐藤が「(野球人生で)一番きつかった」と高校時代を振り返るように、東北高もかつては厳しい指導の例外ではなかったが、現在の練習環境は大きく異なる。
仕掛け人は佐藤。近年は甲子園出場回数が減り、昨夏の県大会も準々決勝で敗退した東北高が、立て直しを図るべく新監督として白羽の矢を立てた人物だ。佐藤は埼玉県内の3つの野球スクールで指導していたこともあり当初は断りを入れたが、学校側の熱意に押され、また「いつかは監督をやりたい」との思いもあったことから、受諾した。