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オーバートレーニング症候群と鬱病だった元陸上800m女王 日本5位まで戻ってきた「奇跡」の1年間

8月のブダペスト世界陸上などの代表選考会を兼ねた陸上・トラック&フィールド種目の日本選手権は、4日まで大阪・ヤンマースタジアム長居で行われた。女子800メートルでは、2017、18年女王の27歳・北村夢(エディオン)が予選2分06秒90の組1着、決勝2分5秒86の5位だった。昨年はオーバートレーニング症候群と鬱病で約3か月休養。オーバートレーニング症候群はよく耳にするワードだが、原因や改善法は意外と知られていない。大会中、自身の経験談と次世代や指導者へのメッセージを送ってくれた。(文=THE ANSWER編集部・浜田 洋平)

女子800m決勝で晴れやかな笑みを浮かべる北村夢、自身の経験談と次世代や指導者へメッセージを送った【写真:奥井隆史】
女子800m決勝で晴れやかな笑みを浮かべる北村夢、自身の経験談と次世代や指導者へメッセージを送った【写真:奥井隆史】

陸上・日本選手権

 8月のブダペスト世界陸上などの代表選考会を兼ねた陸上・トラック&フィールド種目の日本選手権は、4日まで大阪・ヤンマースタジアム長居で行われた。女子800メートルでは、2017、18年女王の27歳・北村夢(エディオン)が予選2分06秒90の組1着、決勝2分5秒86の5位だった。昨年はオーバートレーニング症候群と鬱病で約3か月休養。オーバートレーニング症候群はよく耳にするワードだが、原因や改善法は意外と知られていない。大会中、自身の経験談と次世代や指導者へのメッセージを送ってくれた。(文=THE ANSWER編集部・浜田 洋平)

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 猛スパートには力がみなぎっていた。2日の予選、北村は4番手で最後の直線に入った。3人を抜き去り、2着とは0秒06差のトップフィニッシュ。「決勝に駒を進められて一安心。ラストで絶対に勝てる自信があったので、そこまではしっかり溜めて、溜めて。ずっと耐えるレース展開をしました」。息を切らしながら安堵感を滲ませた。

 1年前、トラックから離れた期間があった。

「去年は自分を追い込みすぎてしまって、精神的に余裕がない状態。休む選択をせざるを得なかった。そのまま辞めようかなってずっと考えていたので、ここに戻ってこられたのが奇跡」

 2017、18年に連覇。自己ベスト2分0秒92をマークし、2005年杉森美保の日本記録2分0秒45の更新も期待された。しかし、コロナ禍の自粛期間中だった2020年は練習を大きく制限された。本格的な練習再開後には故障。復活を期した2022年、今度は首と肩に張りを感じるようになった。

 ケアをしても改善されない。「そしたら日常生活から動悸がするようになってきた」。原因がわからないまま練習を迎える。状態を上げようとしたが、タイムは伸びない一方だった。「練習を重ねるたびに走れなくなっていって、精神的にもおかしくなってしまった」。同年6月の日本選手権は最下位で予選落ち。「その後は完全に心がポッキリ折れてしまった」。オーバートレーニング症候群と鬱病だった。

 大会後に完全休養。陸上のことは頭に入れず、家族と過ごす時間を増やした。「特に何も言わず、ただただ一緒にいてくれた。それが良かった」。3か月の休養の中で少しずつ改善。「やっぱりほどほどにやるのが一番だなって。走れなかった時は走れなかったで、もうそれは仕方ない。ちょっと気楽な考え方をするようになった」。陸上だけが人生ではない。そう思った夏、もう一度トラックに立った。

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