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侮ってはいけない脳震盪「脳細胞には痛覚がない」 選手生命を奪う頭部外傷の恐ろしさ

脳を守ることは、命を守ること

 脳は一度でも致命的な損傷を受けると、なかなか元に戻らない脆弱なものです。不幸にも脳梗塞や脳出血を発症された患者さんが、上肢や下肢の麻痺が残って車いす生活、あるいは杖や歩行器による歩行となることからも分かるように、脳のダメージは一生に大きく影響してしまいます。

 殴り合いをする格闘技やボールが飛んでくる球技、人と人がぶつかる可能性のあるスポーツは、そもそも危険を含んだものである、と言えます。だからこそ可能な限り不要なダメージを防ぐ予防意識と体制が必要なのと同時に、万が一怪我をしたときに現場はどうするのか、即座に適切に対応できる準備を整えておくことが指導者に求められています。

 米国のアメリカンフットボールの選手および家族たちが、ナショナル・フットボール・リーグ(NFL)に対し、頭部外傷が深刻な後遺症を引き起こしたとして、補償を求める訴訟を起こしたことがあります。2016年にはNFL側は競技中に負った頭部外傷との関連を認め、和解と同時に脳のダメージについて厳格な体制をとっていくニュースが報じられました。英サッカー協会が11歳以下の練習中のヘディングを禁止したり、日本サッカー協会(JFA)でも子どものヘディング習得のためのガイドラインが設定されるなど、さまざまな競技において近年頭部外傷への危険性が注目され、選手を守る動きが盛んになっています。

 残念ながらまだこうした頭部外傷に関する医学的情報は、スポーツの現場の隅々まで広く共有されていないように感じています。脳を守ることは、命を守ることにつながります。多くの現場で脳震盪をはじめとする頭部外傷への理解が進み、選手として輝く若者が増えることを願っています。

※1脳振盪 頭部に打撲などの衝撃を受け、一時的に意識や記憶の喪失を伴う症状。軽度の場合、意識消失を伴わないことも。めまいやふらつき、頭痛が発生することもある。

※2セカンドインパクトシンドローム 頭部への衝撃で脳震盪を起こした後、短期間のうちに再度衝撃を受けることで、取り返しのつかない重篤な症状を引き起こすこと。

■二重作 拓也 / 挌闘技ドクター・スポーツドクター、リハビリテーション科医師、格闘技医学会代表、スポーツ安全指導推進機構代表

 1973年生まれ、福岡県北九州市出身。福岡県立東筑高校、高知医科大学医学部卒業。8歳より松濤館空手を始め、高校で実戦空手養秀会2段位を取得、USAオープントーナメント高校生代表となる。研修医時代に極真空手城南大会優勝、福島県大会優勝、全日本ウェイト制大会出場。リングドクター、チームドクターの経験とスポーツ医学の臨床経験から「格闘技医学」を提唱。専門誌『Fight&Life』では10年にわたり連載を担当、「強さの根拠」を共有する「ファイトロジーツアー」は世界各国で開催されている。『Dr.Fの挌闘技医学 第2版』『Dr.F 格闘技の運動学』(DVDシリーズ)『Fightology(英語版/スペイン語版)』『プリンスの言葉』『Words Of Prince(英語版)』など著作多数。

(記事提供 TORCH)
https://torch-sports.jp/

(はたけ あゆみ / Ayumi Hatake)

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