「首より上のミスを止めたい」 西武コーチが“学びなおし”でつかんだ指導術 競技も年代も超え「心を開いてもらうには…」

「バカをやる」ことが必要な時も「彼らの心を開くためには…」
これは、野球人ばかりの世界を離れた時に分かった感覚だという。通った日体大の大学院では、様々な競技からコーチングを学びにきていた。さらに卒業後には、講師として授業でソフトボールを教える機会にも恵まれた。大引コーチが元プロ野球選手だと知らない学生に伝えて導き、成果を出してもらうにはどうしたらいいのか。話を聞き、聞いてもらおうと、接し方を考えた。プロ野球に関わる今も、大いに生きる経験だ。
「こちらも話を聞くには、私を拒絶しないような空気づくりをしないといけない。基本的に、威厳を保ちたいタイプではあるんです。でもそこでスキを見せることによって、空気は変わる。その塩梅は難しいですよ。あまりバカやりすぎても『真剣にやれよ』ってなっちゃうので。真剣さとのバランスとかは今後の課題かもしれないですけど、彼らの心を開くには必要なんです」
そこまで伝え方を考えてもなお、技術は「最終的には自分でつかむものなんです」と言ってはばからない。「自分で経験して、気付くっていうんですかね。回路がつながるっていうか。言葉で言うのも大事ですけど、見せることで、こうだよ、こうだよ、と伝えることもできる。もう一歩前だよと導いて、バチンとハマったときに『それ!』という感じです」。
その瞬間に、いかに早く導けるかがコーチの腕の見せどころだ。プロでの13年間の現役生活はきれいには終わらなかった。最後はヤクルトから戦力外となり、引退を選んだ。苦しんだ現役終盤の経験も、コーチとしては重要な教材だ。
「現役の最後、ショートから移ってサードを守りました。難しさを身をもって感じましたし、それは生きましたね。ホントに。自分がノーだと決めつけていたことが、いろんな人の話を聞くことでイエスなんだと、考えを改めるきっかけになったりとか」
生き残るために、変わり続けるのは選手だけではない。指導者にも、アップデートが常に求められる。大引コーチの“学びなおし”は、プロの現場で今も続いている。
(THE ANSWER編集部・羽鳥 慶太 / Keita Hatori)
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