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“狭い世界”にいたら成長できない EURO出場の日本人コーチ、欧州トップ監督から得た学びとは

本大会初戦で戦うイングランド代表のサウスゲート監督(右)と意気投合。1時間にわたってサッカー談議に花を咲かせた【写真:本人提供】
本大会初戦で戦うイングランド代表のサウスゲート監督(右)と意気投合。1時間にわたってサッカー談議に花を咲かせた【写真:本人提供】

異なる価値観を知ることでコーチングスキルも上がる

 以前、この連載でも話したとおり、現代サッカーでは多様性が重視されている。人種も宗教も異なるメンバーが、お互いの違いを尊重し合いながら戦っていく。自分とは異なるバックグラウンドを持った人を否定するのではなく、それぞれが実力を発揮できる環境を作り上げることは、今や結果を残すチームの絶対条件だ。1つの価値観を押しつけ、型にはめるようなチームは上手くいかない時代と言える。

 だからこそ、多くの選手を束ねる指揮官は自らと違った価値観や視点を持たなくてはいけない。勝手の知らない国に行って指導をすれば、自国では想像もできないような選手やサポーター、メディアからのプレッシャーがあるかもしれない。そうしたことを含めて、自らとは異なる基準を持った人たちからフィードバックを受けることは、指導者としての進化につながるのだ。

 僕も2015年に中国の広州富力で指導を始めてから9年、リスクを負って海外に出ていろいろな経験をすることで見えてきたものがある。自分が気持ちのいいフィードバックだけを受けるのではなく、ネガティブなフィードバックも受けることで僕の中に新たな価値観が形成され、それによってコーチングスキルも上がっていったと思っている。

 日本で普通に生活をしていれば、僕だって日本の文化は居心地がいい。でも、気持ちのいいフィードバックだけを受けていたらチャンスは来ない。選手だけではなく、これから指導者を目指す人もぜひ海外を目指してほしいし、59歳の自分もまだまだアグレッシブに学んでいきたい。EUROのワークショップで話したスパレッティ監督も65歳、先日ギリシャへ視察に行った際に会ったパナシナイコスのファティ・テリム監督も70歳。その年齢になっても最先端の戦術分析を採り入れ、理想のサッカーを追求し続ける姿に刺激を受けた。

 ここ数か月のそうした出会いを経て、僕はEURO本大会へ向かう。ピクシー(ドラガン・ストイコビッチ監督)とともにセルビア代表で3年以上にわたって戦い、欧州最高峰の舞台で新たな経験や学びを得られることに感謝しながら、立ち止まることなく指導者としてさらなる高みを目指していきたい。

(THE ANSWER編集部・谷沢 直也 / Naoya Tanizawa)

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喜熨斗 勝史

サッカーセルビア代表コーチ 
1964年10月6日生まれ。東京都出身。日本体育大学を卒業後、高校で教員を務めながら東京大学大学院総合文化研究科に入学。在学中からベルマーレ平塚(現・湘南ベルマーレ)ユースでフィジカルコーチを務めると、97年に教員を退職しトップチームのコーチとなる。その後セレッソ大阪、浦和レッズ、大宮アルディージャ、横浜FCを渡り歩き、04年からは三浦知良のパーソナルコーチを務める。08年に名古屋グランパスに加入してドラガン・ストイコビッチ監督の信頼を得ると、15年からは中国の広州富力、21年からはセルビア代表のコーチに招かれる。日本人としては初めて、欧州の代表チームのスタッフとして22年カタールW杯の舞台に立った。
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