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「早稲田に勝ちたい」 母校のブランド力を実感、城西大・櫛部静二監督が挑む箱根駅伝での下剋上

出雲3区、全日本3区でともに区間賞を獲得したヴィクター・キムタイ。箱根での走りも注目される1人だ【写真:城西大学】
出雲3区、全日本3区でともに区間賞を獲得したヴィクター・キムタイ。箱根での走りも注目される1人だ【写真:城西大学】

城西大として「ブランドに負けない魅力を作っていかないといけない」

――スカウティングする際、必ず学生に聞くことはありますか。

「大学に入学してから何をやりたいのか。どういう競技観を持っているのか、ですね。ほとんどの高校生、もう90%以上の高校生が箱根駅伝に出たいと言うのですが、そう考えるのは仕方がない。でも僕は、箱根というよりも五輪の選手になりたいとか、日本選手権で優勝したいとか、何かをしたいというビジョンやロマンを持っている選手に来てほしいですね」

――OBの村山紘太選手は、まさにそんな感じだったのではないでしょうか。

「そうですね。彼は、自分を育ててくれるところはどこがいいのかを考え、兄貴(村山謙太/駒澤大-旭化成)を超えるために自分に見てもらいたいということで来てくれた。そういうのは嬉しいですね(笑)。でも、なかなか彼みたいな選手はいない。表面的には『学生チャンピオンになりたい』とか言うんですけど、それを成せるだけの努力をするのかというと、今はそこまでしない子が多いんです」

――箱根駅伝に出場すると、スカウティングでも有利に働きますか。

「もう全然違いますね。箱根に出て、シード権を獲れるようになると、高校生の目の色が違います。本当に分かりやすいですよ(笑)」

――スカウティングでは他校と競合するケースも多いと思いますが、強豪校やブランド力のある大学との競争は厳しいですか。

「間違いなく厳しいですね。僕は早大にいたので、以前は『早稲田に入れたいんですけど、どうしたらいいですか』とよく聞かれました。僕に聞かれてもなぁって思うんですけど、やはりブランドのある大学は名前だけで有利で、良い選手はそういう大学に行きたがります。僕らは、ブランドに負けないだけの魅力を作っていかないといけないし、うちの良さを主張していかないといけない。

 進路に迷っている高校生には、『うちは箱根駅伝だけじゃなく、トラックでも優秀な選手を育てていきたい』ということを伝えます。それでも親御さんの声が大きくて、上手くいかないこともありますが、僕は言い続けて自分たちの大学の魅力を少しでも広め、大きくしていかないといけないです」

――他の中堅校は、スカウティングに苦労していると聞きます。

「どこも欲しい選手は基本的に同じでしょうが、やはりブランド力に劣る学校は厳しいですよ。うちもそうですしね。でも、そうところは環境を整えてすごく頑張っている。東京国際、中央学院、上武、山梨学院とかはブランド力では劣るけど一生懸命にやっている。そういう大学には、自分たちも負けるわけにはいかないです」

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櫛部 静二

城西大 男子駅伝部監督 
1971年11月11日生まれ、山口県出身。城西大経営学部マネジメント総合学科教授。早稲田大1年時から主力として活躍し、箱根駅伝では2区に抜擢されるが、体調不良により後半失速するアクシデントに見舞われる。3年時には1区区間賞の快走で総合優勝に貢献するなど、箱根駅伝を4度走った。卒業後はエスビー食品に入社。実業団選手として活躍したが、2001年に競技を続けながら創部したばかりの城西大駅伝部のコーチに就任、09年から監督となった。10年と12年の箱根駅伝では過去最高の総合6位に導いた一方、個を伸ばす指導を心がけており、16年リオデジャネイロ五輪で5000メートルと1万メートルに出場した村山紘太、21年東京五輪3000メートル障害の山口浩勢らを育てた。

佐藤 俊

1963年生まれ。青山学院大学経営学部を卒業後、出版社勤務を経て1993年にフリーランスとして独立。W杯や五輪を現地取材するなどサッカーを中心に追いながら、大学駅伝などの陸上競技や卓球、伝統芸能まで幅広く執筆する。『箱根0区を駆ける者たち』(幻冬舎)、『学ぶ人 宮本恒靖』(文藝春秋)、『越境フットボーラー』(角川書店)、『箱根奪取』(集英社)など著書多数。2019年からは自ら本格的にマラソンを始め、記録更新を追い求めている。

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