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巨人で選手&裏方20年 東北工業大・荻原満HC、最下位チームを変えた「一方通行ではない」指導

仙台市内にある東北工業大硬式野球部のグラウンドには、ストップウォッチ片手に大きな声で指示を出すヘッドコーチ(HC)の姿がある。プロ野球・巨人でプレーした経歴を持つ荻原満氏(57歳)だ。東北工業大はリーグ戦で春秋ともに最下位(春は宮城教育大と同率)に沈んだ昨年から一転、今春のリーグ戦では4勝を挙げて4位、新人戦は仙台大を破って準優勝と躍進。今年から就任した指揮官の「改革」は着々と進んでいる。前編では崩壊しかけていたチームを立て直した指導法について話を聞いた。(取材・文=川浪 康太郎)

期待の左腕・熊谷蓮を指導する荻原満HC。1人ひとりと深いコミュニケーションを取っている【写真:川浪康太郎】
期待の左腕・熊谷蓮を指導する荻原満HC。1人ひとりと深いコミュニケーションを取っている【写真:川浪康太郎】

東北工業大学硬式野球部・荻原満HCインタビュー前編

 仙台市内にある東北工業大硬式野球部のグラウンドには、ストップウォッチ片手に大きな声で指示を出すヘッドコーチ(HC)の姿がある。プロ野球・巨人でプレーした経歴を持つ荻原満氏(57歳)だ。東北工業大はリーグ戦で春秋ともに最下位(春は宮城教育大と同率)に沈んだ昨年から一転、今春のリーグ戦では4勝を挙げて4位、新人戦は仙台大を破って準優勝と躍進。今年から就任した指揮官の「改革」は着々と進んでいる。前編では崩壊しかけていたチームを立て直した指導法について話を聞いた。(取材・文=川浪 康太郎)

 ◇ ◇ ◇

 荻原は選手、裏方として巨人に約20年間在籍した後、学生野球資格を回復し母校の仙台商高で指導者の経験を積んだ。仙台商を離れた後は時折、日野颯太投手(4年/仙台商)ら教え子が複数人プレーしている東北工業大のグラウンドに顔を出していた。

「練習を見た瞬間、成績に納得がいった。だらだら練習していて、これでは勝てないと思った」

 それが率直な第一印象だ。前・監督の小幡早苗さんに誘われてヘッドコーチに就任すると、投手陣を中心に指導する傍ら、様々な「改革」に着手した。まずは練習を「9時集合」から「9時開始」に変更。アップを行った後は「10分キャッチボール」「5分休憩」などとすべて時間で区切って指示を出す。

 そして全体の練習は3時間以上継続しては行わない。「野球の試合は長くて3時間。それ以上やるとだらだらしてしまう。短い時間で集中して練習してほしい」との考えだ。荻原は正確な時間を把握しつつ、密度の濃い練習を選手たちに課す。

 また荻原は、選手たちに遠慮なく思いの丈をぶつける。就任当初、「俺の練習はとにかくきついからな」と伝えた。「その代わり、(球速を)5キロ速くしてやる。上手くする自信がある」と続けると、怯みかけた選手たちは目の色を変えた。練習会に来る高校生に対しても、「工大は中途半端だと思われているかもしれないけど、俺がいる時は走るぞ。高校でレギュラーとか、エースとか、関係ない。本当にやる気のあるやつだけ上手くしてやる」と言うようにしている。

 きついトレーニングや長距離のランニングは、その意味や効果をすべて説明し納得させた上で取り組ませる。一度納得させれば、その後は何も言わずとも取り組むようになる。練習態度が悪かったり、練習を怠ったりする選手がいれば、厳しく叱ることも厭わない。あえてその姿を見せることで、チーム全体に良い意味での緊張感が生まれる。

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