元巨人&西武の星孝典、なぜ母校監督に? 学生主体の部活に見た危うさと湧き上がった使命感
学生間のコミュニケーション不足の課題に直面
学生監督が今春大学を卒業するタイミングで、大学関係者から監督就任の打診を受けた。過去にも何度か誘われていたが、以前は星自身がNPBを離れる決断を躊躇していたこともあり、実現には至っていなかった。
ただ今回、星はついに首を縦に振る。近年の現状を知り大人が加わることの必要性を感じるなかで、「いずれ監督をしたい」との願望に、「自分が監督をしなければ」との使命感が重なるようになっていたのだ。
監督就任後すぐに、挨拶の大切さなど気になっていたことを学生たちに伝えた。頭ごなしに伝えるのではなく、「これまで普通だったことが、社会では通じないこともある。一歩外に出れば迷惑行為になることもある」といった考えを、あくまでも問題提起という形で投げかけた。生活態度は徐々に変化し、現在は挨拶を当たり前にできる雰囲気もでき上がりつつある。
変化が現れたことに安堵する一方、新たな課題にも直面した。それは、学生間のコミュニケーション不足だ。星は「学生同士で、あまりお互いに干渉しないんです。例えば誰かが良くないことをしていると気づいても、相手に嫌われることを恐れているのか、仲間内で『あれはダメだよ』と話すだけで本人には注意しないまま終わってしまう」と指摘する。
取材日も、課題が顕著に現れる出来事があった。投手と内野手の守備連携を深めるために行う「投内連携」の練習が、星の判断で一時中断されたのだ。
投手が判断を誤り、併殺プレーを完成させられなかった場面で、内野手の1人が「落ち着いてやればホーム間に合うぞ」とつぶやいた。しかしその言葉は投手の耳には届いておらず、星は「すごくいい意見だから、本人に伝えてあげようよ」と声をかけた。一度中断し、全員で意見を出し合ったのち練習を再開。星は「思ったことを言えば、相手にも伝わる。練習を止めて話し合うことも大事だけど、あの場でどんどん意見が出るなら、プレー中に自発的に意見を伝えられるようになってほしい」とさらなる成長を求めている。