監督が「一番挨拶していない」 早大率いた元Jリーガー外池大亮、最も驚いた選手の一言
山田晃士の一言で部の雰囲気が一変
体育会がサークル王者と試合をすれば、そこで初めて「早稲田を代表して」という誇りや、大学の中での体育会の存在意義が腑に落ちる。
「こんなこと、本当にやっていいんですか!」
選手たちが心を躍らせる取り組みを、外池は決してブレーキをかけることなく、むしろ奨励し続けた。
「オレたちの時代にはできなかったことだけど、キミらが良いと思うならどんどんやろうよ」
こうした流れの中から、独特のキャラクターも誕生した。浦和レッズユース出身の山田晃士(ザスパクサツ群馬)というGKがいた。3年時までは浦和でやってきたことがすべてだと思い込み、そのイメージに凝り固まっていたという。だが最上級生になり、外池は本人から「やっぱりプロになりたい」と相談を受ける。
「今のままでは絶対に無理だな。選手としてどこか突き抜けないと難しいんじゃないか」
ある時のミーティングで、山田は全員に向けて主張した。
「最近、凡事徹底が足りていない。やはり毎日の挨拶一つひとつがしっかりとできないと隙が生まれると思う」
なかなか良いことを言うな……と外池は耳を傾けていた。ところが最後に、山田は意外な一言を付け足した。
「ちなみに、この中で一番挨拶をしていないのは外池さんです」
外池は「エッ?」と面食らった。思い当たる節がなかったので、当日の夕方、山田に電話を入れてみた。
「オレ、挨拶はしているつもりだけど…」
「グラウンドに出て来た時に、みんなはそれぞれが外池さんに挨拶をします。でも外池さんは、それに対して1度だけしか挨拶をしていません。本来挨拶とは70~80人部員がいるなら、その一人ひとりの目を見てするものです。1度だけでOKというのは、意外と大きな機会損失になっています」
外池は「こいつ、凄いな!」と、その観察力や弁舌に感心した。翌日外池は、全員の前で「これからはしっかりやります」と謝罪し、以後、部の雰囲気は著しく改善されたそうだ。