監督が「一番挨拶していない」 早大率いた元Jリーガー外池大亮、最も驚いた選手の一言
たとえサブでも「プロとして居場所を見つけた」
山田の一言は、チームのムードを一変させる。それから山田の試合前の演説は関東大学リーグ全体に知れ渡り、大勢の他校の選手たちが見物に来るようになる。
「4年時の山田は正GKとして試合にも出続け、チームも安定したシーズンを送りました」
結局山田はザスパクサツ群馬からオファーを受け、現在はJリーグでも試合に向かうスタメン組への全身全霊の声かけが名物として定着している。
「山田の声かけは凄く緻密で、かけられた側が『どうしてそんなことが分かるの!』と驚くほど的確で心地良い激励をしている。彼はサブでも、まさにプロフェッショナルとして居場所を見つけた。アイツこそ早稲田らしさの象徴かもしれません」
外池は早大を巣立っていく選手たちに必ず伝えてきた。
「ここで学んだことは必ず活きる。でも社会人になって3年間は苦しむよ。主体性を売りにしても『自分の好きなことばかり言いやがって』という反発は当然ある。でも5~7年後には、主体的に何かを見つけ出す力が、絶対に必要とされる。だから、そこは諦めないでやっていこう」
毎年卒業生の背中を見て「みんな、逞しくなったな」と実感してきた。
「主体的に考えて発信力を持つ大人を多数輩出できたと思います」
だから外池には「らしくない」監督を実践してきた5年間に、微塵も悔いがない。(文中敬称略)
(加部 究 / Kiwamu Kabe)