プロ内定9人は早稲田史上初 元Jリーガーが貫いた「監督らしくない監督になる」信念
日本代表やイングランド・プレミアリーグで、筑波大出身の三笘薫(ブライトン)が目覚ましい活躍を見せるなど、近年の日本サッカー界では大学経由でプロ入りする流れが再評価されている。様々な指導者が独自の哲学によってチームを指揮するなか、昨年11月に退任するまで大学サッカーの名門・早稲田大を5年間指揮してきたのが、現役時代に湘南ベルマーレや横浜F・マリノスなどでプレーした外池大亮氏だ。就任以来、伝統のスタイルに囚われず、柔軟な発想によるチーム運営を続け、何人ものJリーガーを育ててきた。異色のキャリアを歩む外池氏の指導論に迫るインタビューの第1回では、9人ものプロ内定者を出しながら関東大学リーグ2部降格の憂き目を見た最後のシーズンを振り返った。(取材・文=加部 究)
外池大亮「早稲田の伝統に挑んだ5年間」第1回、選手育成で手にした傑出した成果
日本代表やイングランド・プレミアリーグで、筑波大出身の三笘薫(ブライトン)が目覚ましい活躍を見せるなど、近年の日本サッカー界では大学経由でプロ入りする流れが再評価されている。様々な指導者が独自の哲学によってチームを指揮するなか、昨年11月に退任するまで大学サッカーの名門・早稲田大を5年間指揮してきたのが、現役時代に湘南ベルマーレや横浜F・マリノスなどでプレーした外池大亮氏だ。就任以来、伝統のスタイルに囚われず、柔軟な発想によるチーム運営を続け、何人ものJリーガーを育ててきた。異色のキャリアを歩む外池氏の指導論に迫るインタビューの第1回では、9人ものプロ内定者を出しながら関東大学リーグ2部降格の憂き目を見た最後のシーズンを振り返った。(取材・文=加部 究)
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2022年度に早稲田大学ア式蹴球部(サッカー=アソシエーション・フットボールなので、早大ではそう命名された)からは、3年生2人を含めて計9人のプロ内定者が誕生した。これは創部以来98年間の歴史の中でも初めての快挙だった。
だが皮肉なことに、こうして個々の成長がJクラブから高い評価を集めながら、チームの戦績は低迷した。関東大学リーグ1部では3勝5分14敗で12チーム中最下位に終わり2部に降格。5年間チームを指揮してきた外池大亮監督は辞任した。
確かにチームの勝利を追求するプロの世界なら、監督の仕事ぶりは評価に値しないのかもしれない。ただし大学体育会の活動を「社会に出て行く直前の最後の育成過程」と定義するなら、外池への評価は180度変わってくるかもしれない。
もともとスポーツの主人公は選手たちで、本来指導者に課せられるのは彼らの希望実現に近づけることだ。この観点からすれば約8割が卒業後にプロ入りを目指す選手たちの大願を、外池ほど叶えた指導者はいない。しかも外池は「サッカー界のみならず、サッカーをプレーしてきた経験を通して、将来日本をリードしていくような人材の養成」を考え、あくまで選手たちに主体的な活動を促してきた。逆算してプロ入りや就職を控えた学生たちに、体育会の活動を通して貴重な社会の模擬体験の機会を提供してきたと見ることもできる。
自ら「天邪鬼」と称す外池は、大上段から一方的な指示系統を築く旧来の監督の概念を覆し、選手たちとの距離を縮めてファシリテーター(適切な進行役)に徹してきた。