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留学生ワンジルの「1区はない」 大東大監督が断言、箱根駅伝シード権獲得へ描く戦略

全日本大学駅伝で惨敗して「みんな危機感を持った」

――自分たちの道を示してくれる監督を求めていた感じがしますね。

「学生たちは、飢えていましたね。中学生や高校生に言うようなことも、めちゃくちゃ僕の目を見て聞いてくるんです」

――指導していくなかで、学生たちの意識もかなり上がりましたか。

「うーん、まだこれからでしょうね。箱根駅伝の優勝って、誰もが取れるものじゃない。そういう特別なものを取ろうとするのであれば、普通の学生が当たり前にしていることや当たり前と思うことを、捨てていかないといけないと思うんです。人間には私利私欲があるけど、それを一般の普通の学生と同じように捉えてはいけない。

 この前、ある学生が『推しのアーティストのライブに行きたい』と言ってきたんです。でも全日本で惨敗したなか、今、行くタイミングなのかと。もちろん、行きたい気持ちは分かります。箱根が終わった1月から3月頃なら、どうぞ楽しんでこいって送り出します。でも、箱根を前にした今は、そういう時期じゃない。それでも行きたいならどうぞと言ったら『認識が甘かった』という答えが戻ってきたので、僕は『分かってくれてありがとう』と伝えましたね」

 覚醒しつつある選手たちを率いて、来年1月、いよいよ箱根駅伝を戦うことになる。全日本大学駅伝で起用したピーター・ワンジル(2年)の1区は「もうない」と真名子監督は語るが、いろいろな策を練っているのは間違いない。全日本は14位と惨敗したが、その危機感を共有し、どのようにシード権獲得、そして大東文化大の存在感を示すのだろうか。

――箱根駅伝に向けて、全日本の惨敗をどのように活かしていきますか。

「今となっては変な話、全日本大学駅伝でシードを失って良かったのかもしれないと思っています。全日本での結果が良ければ、たぶん箱根駅伝の予選会後のような雰囲気が出てしまったと思うんです。でも惨敗して、シード権を失って、みんな危機感を持った。全日本の失敗があったから箱根のシードを獲りにいけたと振り返りたいですし、今の状況のほうが本番に向けて持っていきやすいと思っています」

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真名子 圭

大東文化大 陸上競技部 男子長距離ブロック監督 
1978年生まれ、三重県出身。選手時代は大東文化大で箱根駅伝に4年連続で出場し、4年時には10区で区間賞の走りを見せた。本田技研(現・Honda)で競技生活を終えると、三重での高校教員を経て2012年に仙台育英高に赴任。陸上競技部長距離男子の監督としてチームを強化し、19年の全国高校駅伝で優勝した。今年4月、低迷していた母校に戻ると全日本大学駅伝、箱根駅伝と本戦出場に導いている。

佐藤 俊

1963年生まれ。青山学院大学経営学部を卒業後、出版社勤務を経て1993年にフリーランスとして独立。W杯や五輪を現地取材するなどサッカーを中心に追いながら、大学駅伝などの陸上競技や卓球、伝統芸能まで幅広く執筆する。『箱根0区を駆ける者たち』(幻冬舎)、『学ぶ人 宮本恒靖』(文藝春秋)、『越境フットボーラー』(角川書店)、『箱根奪取』(集英社)など著書多数。2019年からは自ら本格的にマラソンを始め、記録更新を追い求めている。

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