元オリンピック選手が保育園児に教える 異色の“幼児スポーツ教育”挑戦のワケ
プロジェクト発展へ「職員が一流選手から学び、実践して続けること」
――プロジェクトは始まったばかり。今後、どんな風に発展させていきたいですか。
菊地「まずは一回やって終わりではなく、職員が一流選手から学んで、それを実践して続けていけるようにすること。あとは、いろんな種目をチャレンジしたい。保育現場でどこも触れたことがないようなマイナースポーツもやりたい。カバディとか、どこに可能性があるかわからないので。一方で、何回も繰り返しやりたいものもある。伊藤さんがやられている走り方もそう。今は年長がやっているけど、年長が覚えることで下の子たちが憧れるんです。5歳ができるようになると3歳、4歳が見て真似をする。真似ることで学んでいく。それを継承して園の中でスポーツプロジェクトが浸透し、子どもたちの活動が広がっていく。加えて、それが家庭に伝わっていってほしい。親にまでスポーツ教室の価値が浸透していくと、家族の活動自体も広がっていくと思います」
丸山「僕らクリアソンとしては『スポーツ教育の差分』を提示していきたいと思っています。どうしても、スポーツ教育は気合、根性、健康とか抽象度の高い言葉で理解されがち。でも、かけっこ、サッカー、カバディで学べる力は全部違う。子どもたちがスポーツをすることで、それぞれの種目から得られるものの差分を指導者、親が理解してほしい。僕らのビジョンに掲げているのは、スポーツの価値を通じ、様々な世界をつなげて豊かさの体現者を増やしていくこと。
伊藤さんが持っているメソッドを学び、東京児童協会さんが持っているノウハウを学び、僕らがもっと豊かになりたい。そういう関係性で社会がスポーツを通じ、豊かになっていくモデルを作りたい。伊藤さんのような素晴らしいコンテンツを持っている方が正しく評価され、本質的なことをやっている園が社会の目に触れられ、他の園が刺激を受けて学んでいく循環ができると、スポーツから社会がもっと面白くなっていくと思います。伊藤さんはいかがですか?」
伊藤「小さいうちに体験したことは、ずっと記憶に残るはず。だからこそ、最初の体験をできるだけ質の高い、なおかつ、楽しいものにしてあげたい。同世代を見ても才能やセンスがないと諦めている人が多いけど、実は走りって良い方法を学べば誰でも速くなるという理解が深まると、よりいいなと。そういう考えを広げていけたら、もっと日本のスポーツ界の競技力自体も高まるんじゃないかとも思います。一方で、走り方を通じて頑張る方法がわかったからサッカー、バスケに生きたとか、そういう風に走りから学びを得て、その後の人生が豊かになってくれるといいですね」
(23日の後編に続く)
<菊地元樹> 社会福祉法人東京児童協会 経営企画室室長。株式会社ONE ROOF 代表取締役。「江東区白河かもめ保育園」「新宿三つの木保育園もりさんかくしかく」の園長などを経て2011年に社会福祉法人東京児童協会事務局長に就任。2017年には株式会社ONE ROOF代表取締役に就任し、東京児童協会の保育ノウハウを基盤に企業主導型保育園事業や、放課後児童支援事業(学童事業)を展開。新しい子育て社会を実現していく革新的な取り組みや、海外への保育事業の展開を図っている。
<古澤まどか> 富久ソラのこども園ちいさなうちゅう 本園 分園 園長。2007年入職。「江東区白河かもめ保育園」「亀戸こころ保育園」で主任を経験し、「富久ソラのこども園ちいさなうちゅう」での副園長を経て2018年より現職。「生きる力・思いやり・夢」を育むの3本柱を保育の中心に据え、本園、分園合わせて0~5歳児総勢244人の保育に奮闘中。
<丸山和大> 株式会社Criacao代表取締役社長CEO。総合商社を経て、13年株式会社Criacaoを創業。地域スポーツの推進、スポーツ人材のキャリア教育、企業やビジネスパーソンに向けたビジネスコンサルティング、そしてサッカークラブCriacaoの運営等、スポーツを軸に多岐にわたる事業を展開。
<伊藤友広> 国際陸上競技連盟公認指導者(キッズ・ユース対象)。高校時代に国体少年男子A400メートル優勝。アジアジュニア選手権日本代表で400メートル5位、1600メートルリレーはアンカーを務めて優勝。国体成年男子400メートル優勝。アテネオリンピックでは1600メートルリレーの第3走者として日本歴代最高の4位入賞に貢献。現在は秋本真吾氏らとスプリント指導のプロ組織「0.01 SPRINT PROJECT」を立ち上げ、ジュニア世代からトップアスリートまで指導を行っている。
(THE ANSWER編集部)