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「もっと良い選手が出なければおかしい」 スペイン人指導者が見る日本サッカーの問題点

大会が乱立する高校サッカー、インターハイは「誰も得をしない大会」

――特に日本の高校年代は大会が乱立しています。お二人は、この点をどうお考えですか?

リノ「スペインでは最も大切なのがリーグ戦です。確かに日本の高校選手権はテレビ中継もあり特別な経験にはなりますが、こうした短期間の大会は勝つためのサッカーにしかならない。年間を通して質を高めていくには、リーグ戦が重要です」

吉住「昔に比べれば、日本もだいぶリーグ戦が浸透しました。ただし10チームでは1試合が重過ぎる。16~18チームなら、いろいろと試せると思います。また高校選手権は1世紀近い歴史を持つ大会です。継続しながら、もう少しリーグ戦の結果を反映させて、本当に強いチームを出せる仕組みを考えてもいい。そうすれば、市立船橋や流通経済柏が県内予選で消えることもなくなります。

 一方でインターハイは、運営側も指導者側も熱中症対策で大変です。選手も含めて、誰も得をしない大会になっています。僕も夏休みに、エスパニョールアカデミーのサマーキャンプを実施していますが、もう日中はとても無理です」

リノ「日本はもっと通信制高校の仕組みを活用すれば、休養を確保しながら余裕をもって勉強もできる。今、欧州へ出ているほとんどの日本人選手はベンチに座ったり、出場時間が限られている。香川は上手い選手だけど、サッカーにはもっとずる賢かったり荒かったりする一面もある。そういうことにも対応できる選手を育てていく必要はあるだろうね」(文中敬称略)

[指導者プロフィール]

■リノ・ロベルト
1972年4月26日生まれ。UEFA(欧州サッカー連盟)スペイン連盟の指導者資格を持ち、2002年からアトレチコ・マドリードでカンテラの指導に携わり、2017年に来日。埼玉県のジュニアユースチームでU-15監督を務めた。スペイン連盟からは、主に指導者対象の戦略セミナーを任された。今年から「ファーダンサッカースクール」のプロ育成クラスのメインコーチを務めている。

■吉住貴士
1986年12月8日生まれ。国見高校時代に全国制覇し、鹿屋体育大学では主将を務める。大学卒業後は長崎総合科学大学附属高校のコーチを6年間務めたが、その後スペインに渡り現地のチームで4年間指導。現在はRCDエスパニョールジャパンアカデミーの責任者。

(加部 究 / Kiwamu Kabe)

[セレクション開催]
今回の対談に登場したリノ・ロベルト氏がコーチを務める「Professional Training Center(プロトレセン)」が、小学新2年生(U-8)、小学新3年生(U-9)を対象に選考会を開催する。詳細や応募方法は下記URLへ。
https://note.mu/jpn_academy2019/n/n5d27de4a386d

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加部 究

1958年生まれ。大学卒業後、スポーツ新聞社に勤めるが86年メキシコW杯を観戦するために3年で退社。その後フリーランスのスポーツライターに転身し、W杯は7回現地取材した。育成年代にも造詣が深く、多くの指導者と親交が深い。指導者、選手ら約150人にロングインタビューを実施。長男は元Jリーガーの加部未蘭。最近、選手主体のボトムアップ方式で部活に取り組む堀越高校サッカー部のノンフィクション『毎日の部活が高校生活一番の宝物』(竹書房)を上梓。『日本サッカー戦記~青銅の時代から新世紀へ』『サッカー通訳戦記』『それでも「美談」になる高校サッカーの非常識』(いずれもカンゼン)、『大和魂のモダンサッカー』『サッカー移民』(ともに双葉社)、『祝祭』(小学館文庫)など著書多数。

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