「冷静さを育てるのは環境」 “皇帝”ベッケンバウアーの言葉が示す日本の強み
ドイツと“アジアのプロイセン”日本にある共通性
ドイツは日本以上に規律に厳しい国だ。まったくクルマが見当たらなくても、赤信号で渡る人はいないし、無賃乗車が発覚した場合の罰金も厳格だ。そういう土壌があり、最後の最後まで冷静に闘い抜く伝統が引き継がれているとすれば、それはドイツ人が「アジアのプロイセン」と呼ぶ日本も共有する特徴なのかもしれない。
アジアカップの準決勝で、イランとの明暗を分けたのもメンタルコントロールだった。逆境でのメンタルコントロールに難があった米国育ちの大坂なおみが、ドイツ人のサーシャ・バインをコーチに迎えたのも実に理に適ったことだったに違いない。
晩年のベッケンバウアーは、新設された北米リーグに参戦。だがペレ、クライフらスーパースターを集めて華々しく脚光を浴びたリーグは、瞬く間に衰退していった。
「しかし米国と日本の状況は比べられない。北米リーグは底辺のないところに、突然トップの選手たちを連れて来た。でも日本では、今までもサッカーリーグがあったし、たくさんの子供たちもプレーしてきた。そういう土壌があるんだから、必ず成功するよ」
Jリーグ創設当時の皇帝の予言である。
(加部 究 / Kiwamu Kabe)