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ファジーカスが好例「毎晩21時に寝て酒も飲まず…」 プロ初の全クラブ参加、外傷障害調査が育成年代に残すもの

目的は、クラブの垣根を越えて選手の安全を守り、稼働の最大化とパフォーマンス向上を目指すこと

「B.LEAGUE 2022-23SEASON Injury Report」は、2022-23シーズン中にB1、B2全38クラブで発生した外傷・障害についての調査結果をレポート化したもの。各クラブの担当者がアスリートのコンディションデータプラットフォーム「ONE TAP SPORTS」を通じて報告した外傷・障害データを収集・集計して作成されている。

 今回のレポート内では

・2022-23シーズンにおけるB1、B2合計の外傷・障害件数は513件で過去最多。
・部位別では足関節の外傷・障害が最も多く、中でも足関節捻挫が最も多い。
・外国籍(アジア特別枠選手を除く)の登録選手における外傷・障害発生割合は71.4%。日本人選手は54.4%であり、発生割合は外国籍選手の方が高い

 といったデータが明らかになった。

 レポートを監修したのは「B.LEAGUE SCS推進チーム」。まずはこのチームの成り立ちから説明したい。

 名称の「SCS」とは「Safety=命を守る」「Condition=選手稼働の最大化」「Strength=パフォーマンスの向上」という3つの理念の頭文字から取ったもの。Bリーグでは2020-21シーズンからのコロナ禍において、その対策チームを設置し、専門家を交え医学的な知見を基に事業継続のための各種意思決定を行ってきた経緯がある。SCS推進チームはその領域を感染症以外にも広げ、前述の3つの理念のために整形外科や脳神経外科などの外部の専門家を加えて編成されたチームだ。

 SCS推進チームの取り組みを進めることで、Bリーグはクラブの垣根を越えて選手の安全を守り、選手稼働の最大化とパフォーマンス向上を目指す。目的は、蓄積したデータを分析し、対策を取ることで未然に防げる怪我を明らかにし、選手の安全を守ることでパフォーマンスを最大化し、クラブやリーグの価値を高めることである。

 立ち上げをリードした、Bリーグバスケットボールオペレーショングループ・数野真吾氏はこう語る。

数野氏(以下敬称略)「以前から、リーグ全体のフィジカルパフォーマンスのレベルを底上げしたいという発想がありました。ただしパフォーマンス強度が上がるにつれて、どうしても欠場選手は増えていく。Bリーグのトップリーグとしての価値を最大化させるには、そこに何らかの手を打つ必要がある。つまり、負傷を減らす取り組みは必須と言えます。

 以前から各クラブのメディカルスタッフが集まるトレーナー部会は定期的に開催していましたが、取り組みをさらに前に進めるにはドクターなど専門家の知識が欠かせません。そこで、それぞれの知見を持った多くの方々の協力のもと、体制化に至りました」

 今回のレポートについて、SCS推進チームの中心人物の一人で、当時川崎ブレイブサンダースのフィジカルパフォーマンスマネージャーを務めた吉岡淳平氏はこのように語る。

特に外国籍選手の負傷データが気になると話す吉岡氏【写真:小野瀬健二】
特に外国籍選手の負傷データが気になると話す吉岡氏【写真:小野瀬健二】

吉岡氏(以下敬称略)「最も多い外傷・障害の部位がまず足首で、次に膝、種類別では大腿部の肉離れ、といったデータはデータ収集前から予想していた通りでした。ただしそれらの発生時期や、日本人・外国籍・帰化選手という属性ごとのデータはこれまでになく、非常に興味深いものでした。特に気になったのは外国籍選手(※アジア特別枠選手を除く)の負傷の多さと受傷タイミング、重症度でした」

 2023年12月に発表された2023-24シーズンの「開幕前および10月分外傷・障害発生状況」のレポートと、2024年3月に発表された「2024年1月末分外傷・障害発生状況」のレポートで明らかになったことのひとつが、シーズン序盤での外国籍選手の負傷頻度。特にレギュラーシーズン開幕直後の10月、外国籍選手の発生割合は日本人選手の2倍。外国籍選手の負傷が、開幕直後の10月に集中して起こっていることが分かった。

数野「外国籍選手のシーズン序盤の負傷をどう減らすか。軸となる外国籍選手が一人、二人いないだけでも、チームのパフォーマンスは大きく下がります。それは勝敗に直接的に関わるのみならず、興行面でも非常に大きな影響となります。外国籍選手が健康に稼働してくれているかどうかは、リーグにとっても非常に重要なこと。彼らの新チームへの合流時期やトレーニング強度の設定について、リーグも決して無関心ではいられません」

 Bリーグはすでに各クラブのGM(ゼネラルマネージャー)と、外国籍選手の新チームへの早期合流と適切なトレーニング負荷の設定についてのコミュニケーションを取り始めている。早ければ2024-25シーズンから、何らかの効果の表れを期待できるだろう。

 もちろんレポートの内容はそれにとどまらない。例えば2022-23シーズンの脳振盪の発生件数は31件で、2021-22シーズンの約2.2倍。2022-23シーズンの試合数は2021-22シーズンの1.18倍であり、2021-22シーズンのコロナ禍の影響による試合数減の影響を考慮しても、明らかに増加している。そして試合時の受傷割合は特に4Qの比率が高い。試合終盤での競技強度の高まりや疲労による姿勢制御能力、予測的姿勢制御能力の低下が影響している可能性もある。

 また外傷・障害の発生割合を年齢カテゴリーごとに集計すると、22歳以下が62.9%と最も高いことも明らかになっている。数野氏はその点を問題視し「最も大事なのは、この取り組みにおいて得られたデータを、ユースそして若年層への指導に生かしていくこと」と断言する。

 ではこれらを踏まえ、育成年代の指導者は今回のレポートをどのように読み解き、そこから得た知見をどのようにチーム作りに還元していくべきなのか。

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