選手のプレーを劇的に変えた“2分半の声かけ” 積極性を生む「褒めまくる」言葉の力
急変貌させる秘訣は、サッカーを始めた頃の気持ちを引き出すこと
上船は、明治大学のセカンドチームを指揮した1年間で成功体験を積んでいる。関東大学1部のインディペンデントリーグ(セカンドチームのリーグ戦)で、チームは個々が年間を通しても成長を遂げ、無敗で優勝を飾った。
「時間の長短はありますが、毎日必ず実践したのが紅白戦でした。例えば日曜日の試合で快勝し、月曜日がオフだとすると、火曜日の時点ではリーグ戦で快勝した選手たちがスタメンです。でも火曜日の紅白戦で活躍した選手がポジションを奪い、それが毎日繰り返されていく。だから試合前日のセットプレーの練習まで、チーム全体が緊張感に包まれていました。選手たちも、このセットプレーで結果を出せば、試合に出られることを知っていますからね」
それは試合中も同じだったという。ベンチに座った選手にも、必ずチャンスが巡ってくるという意識が浸透していた。
「東海大に5-0で快勝した試合があったんですが、前半は1-0で折り返し。しかし後半の途中から出場した選手たちが全員ゴールを決めました」
誰もが楽しいから始めたサッカーである。だから上船は、その初心のままのポジティブなプレーを引き出そうとする。急変貌の秘訣は、誰もが知る当たり前のことを、確実に実践し続けることにある。(文中敬称略)
(第4回へ続く)
[指導者プロフィール]
上船利徳(うえふね・としのり)
神村学園高校、東京国際大学でプレーし、ドイツ4部のKFCユルディンゲンとプロ契約。怪我で引退するが帰国後「ファーダンサッカースクール」を起ち上げ、明治大学コーチなども経験し、25歳で神村学園がエリート人材の育成を目的として展開する「淡路島学習センター」のセンター長に就任。「キックマスター講座」も好評。
(加部 究 / Kiwamu Kabe)