[THE ANSWER] スポーツ文化・育成&総合ニュースサイト

Jリーグ監督として味わった“苦い経験” キャリア10年、名将の言葉に見た成長のヒント

Jリーグ各クラブの下部組織には“育成のスペシャリスト”である指導者が多く名を連ねているが、その中でやや異なる道を歩んできたのがガンバ大阪ユースの森下仁志監督だ。39歳でジュビロ磐田の監督に就任して以降、4チームのトップ監督としてJリーグを戦い、苦い経験も味わいながら再びユース年代を指導し、有望な若手の才能を引き出している。順風満帆とは言えない指導者キャリアを歩みながら、追求してきた森下監督の育成哲学とは――。最終回となる今回は、これまでの指導者キャリアを振り返りながら、目指す監督像について語った。(取材・文=小宮 良之)

2019年、ガンバ大阪U-23で指揮を執った森下仁志監督【写真:Getty Images】
2019年、ガンバ大阪U-23で指揮を執った森下仁志監督【写真:Getty Images】

森下仁志監督「若手育成の哲学」第4回、10年間の監督キャリアで見えたもの

 Jリーグ各クラブの下部組織には“育成のスペシャリスト”である指導者が多く名を連ねているが、その中でやや異なる道を歩んできたのがガンバ大阪ユースの森下仁志監督だ。39歳でジュビロ磐田の監督に就任して以降、4チームのトップ監督としてJリーグを戦い、苦い経験も味わいながら再びユース年代を指導し、有望な若手の才能を引き出している。順風満帆とは言えない指導者キャリアを歩みながら、追求してきた森下監督の育成哲学とは――。最終回となる今回は、これまでの指導者キャリアを振り返りながら、目指す監督像について語った。(取材・文=小宮 良之)

 ◇ ◇ ◇

「(監督としての)結果だけを見たら、とっくに終わっていてもおかしくない」

 ガンバ大阪のユース監督を務めて2年目になる森下仁志(49歳)は、そう言ってからりと笑い飛ばした。

 ガンバ大阪、コンサドーレ札幌、ジュビロ磐田で現役を過ごした森下は、39歳という若さでJ1磐田の指揮を任されている。人間的な熱さと誠実さが、指導者の天性として高い評価を受けた。ただし、必ずしも結果は出ていない。

 磐田では、2シーズン目の途中で解任の憂き目を見ている。J2の京都サンガF.C.ではヘッドコーチから暫定監督を務め、J1のサガン鳥栖を1年率いたが、成績自体は振るわなかった。その後はJ2のザスパクサツ群馬を率いたが、結果は降格だ。

 2019年、プロキャリアの原点であるG大阪に戻って、U-23を率いるようになってから、その指導力を開花させた。1年目で中村敬斗(現LASKリンツ)、食野亮太郎(現エストリル・プライア)などをトップから一足飛びにヨーロッパのクラブへ移籍させ、他にも福田湧矢、谷晃生(現・湘南ベルマーレ)など多くの選手に影響を与えている。その熱血が、若い選手たちの覚醒をもたらした。森下が見つめる監督像とは――。

――ご自身の監督業を振り返って、いかがですか?

「39歳の時にジュビロ(磐田)で監督をスタートさせてもらい、ちょうど10年が経ちました。いろいろありましたが、まだまだ積み重ねが甘いと思います。それでも話をいただけてきたのは、なぜなのか。家族とか、周りの人には、『選手とタイミング、タイミングで良い出会いをさせてもらって、それで生かされている』って言っています。有難いしかないですね」

――監督は監督であり続けることで成長する、とも言われますが……。

「(ミゲル・アンヘル・)ロティーナが、ヴィッセル神戸の監督就任の挨拶で、『サッカーからの贈り物』という表現をしていたんですが、いい言い方をするな、と思いました。凄い経験を積んできた指導者ですが、サッカーに生かされているという感覚があるんだな、と。J2の監督会議でお会いした時も、監督を続けてきた落ち着きがあるなと思いました。ロティーナやネルシーニョのように、60、70歳でも第一線でグラウンドに立っていたいですね」

1 2 3

森下仁志


1972年生まれ、和歌山県出身。現役時代は帝京高、順天堂大を経て95年にガンバ大阪に加入。コンサドーレ札幌、ジュビロ磐田と渡り歩き、J1通算202試合9得点、J2通算37試合1得点の成績を残した。2005年の現役引退後は指導者の道へ進み、12年に磐田監督に就任。京都サンガF.C.、サガン鳥栖、ザスパクサツ群馬の監督を経て、19年に古巣G大阪U-23監督となり、昨年からユースを率いている。中村敬斗(現LASKリンツ)や食野亮太郎(現エストリル・プライア)らの才能を引き出すなど、若手の指導に定評がある。

小宮 良之

1972年生まれ。大学卒業後にスペインのバルセロナに渡り、スポーツライターに。トリノ五輪、ドイツW杯を現地取材後、2006年から日本に拠点を移す。アスリートと心を通わすインタビューに定評があり、『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など多くの著書がある。2018年に『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家としてもデビュー。少年少女の熱い生き方を描き、重松清氏の賞賛を受けた。2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を上梓。

W-ANS ACADEMY
ポカリスエット ゼリー|ポカリスエット公式サイト|大塚製薬
DAZN
ABEMA
スマートコーチは、専門コーチとネットでつながり、動画の送りあいで上達を目指す新しい形のオンラインレッスンプラットフォーム
THE ANSWER的「国際女性ウィーク」
N-FADP
#青春のアザーカット
One Rugby関連記事へ
THE ANSWER 取材記者・WEBアシスタント募集