学生起業家がうつ病になって気づいたこと 選手に寄り添う育成ツールに込めた願いとは
スポーツの現場では近年、テクノロジーの発展とともに様々なツールやサービスが開発され、日々のトレーニングをサポートしている。その一つとして注目されているのが、電子版スポーツノート「Aruga」(アルガ)だ。25歳の創業者・木村友輔氏は、筑波大学在学中に起業したキャリアの持ち主。子供の頃からサッカーに打ち込んできた木村氏は、なぜ電子版スポーツノートを開発することになったのか。後編では起業後に発症したうつ病の経験や、アルガのサービスの根底にある想いを語った。(取材・文=原山裕平)
「電子版スポーツノートの可能性」後編、木村友輔氏を起業後に襲った病
スポーツの現場では近年、テクノロジーの発展とともに様々なツールやサービスが開発され、日々のトレーニングをサポートしている。その一つとして注目されているのが、電子版スポーツノート「Aruga」(アルガ)だ。25歳の創業者・木村友輔氏は、筑波大学在学中に起業したキャリアの持ち主。子供の頃からサッカーに打ち込んできた木村氏は、なぜ電子版スポーツノートを開発することになったのか。後編では起業後に発症したうつ病の経験や、アルガのサービスの根底にある想いを語った。(取材・文=原山裕平)
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アイデアの着想は、筑波大のサッカー部時代にあった。
選手が個人の目標や振り返りを書き込む「サッカーノート」というものがある。今では競技を問わず、多くのスポーツチームで活用されているものだが、基本的には紙に手書きで、コーチ側も手書きでフィードバックすることがほとんどだ。
「筑波大も160人の部員がいて、監督は1人。160人分をフィードバックする作業はとても大変なこと。でもこれをIT化すれば、単純に指導者も楽になりますし、選手側もスマホに打ち込むスタイルなら、継続的に取り組めるようになるのではと思い、電子版スポーツノートを考えました」
これまで運用してきた「シェアトレ」は、発展性に限界を感じていた部分もあったため、新たなサービスを考える必要があった。そのなかで木村氏はこの「電子版スポーツノート」の開発に向けて、プロジェクトをスタートさせた。
ところが、ここで思いもよらないアクシデントが起きてしまう。
「会社のメンバーも増やし、資金も調達してやっていこうというタイミングで、うつ病になって働けなくなってしまったんです」
医者からは「働いてはダメだ」と言われた。夜は眠れないし、手も震える。動悸も激しくなった。木村氏は半年以上休養し、30人に増えた会社も解散。木村氏の下に残ったのは、「シェアトレ」時代からの共同創業者とインターン生2人の3人のみだった。
しかし、このうつ病の発症が、電子版スポーツノート「Aruga」(アルガ)開発を大きく前進させることになる。
「僕が休養している間に、残ったメンバーが、今のサービスの原型となるチャットボットを作ってくれたんです。うつになりかけた時、カウンセリングの人に相談に乗ってもらっていたんですが、そのサポートは週に1回くらいだったんです。つまり、“点”のサポートしか受けられず、継続的ではなかったんですね。でも、その“点”に加えて、毎日『体調どうですか?』と聞いてくれるような存在があれば、“線”のサポートになるんです。しかもチャットボットなら、手軽に毎日見ることができる。彼らがそういうものを開発してくれたんですが、これをスポーツビジネスに使えるんじゃないかと。ある人が誰かを継続して見てあげたいという想いを叶えるためのツールとして作ったものを、スポーツに応用させたのがアルガなんです」