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高体連の環境に疑問 淡路島で実現した「3年間同じ部活」に縛られない理想の育成

昨年の選手権予選前に訪れた窮地

 窮地はそれだけではなかった。「エリート人材育成淡路島学習センター」は、当初神村学園のサポート校として登録し、兵庫県の高体連の大会にも出場してきた。ところが昨年の選手権予選が始まる直前に突然、兵庫県高体連から「サポート校では全国大会への登録はできません。こちらの確認不足でした」との連絡を受けた。さすがに同高体連も不手際の責任を感じ在校生の出場は認めたが、そのままの体制では新入生たちの道が断たれてしまう。

 上船は即座に兵庫県内の学校へ片っ端から連絡を入れ、新しい受け入れ先を探った。相生学院も最初は校長に断られたが、それでも「ぜひ理事長に会わせてください」と粘りに粘った。結局翌日には森和明理事長が淡路島の施設を視察に訪れ、上船と顔を合わせるなり「キミの目を見れば、いかに本気なのかは分かる」とプロジェクトの受け入れに合意。早速サッカー部全員が転校手続きを済ませる。

 潮目は変わり、ようやくプロジェクトは好転し始めた。(文中敬称略)

(加部 究 / Kiwamu Kabe)

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加部 究

1958年生まれ。大学卒業後、スポーツ新聞社に勤めるが86年メキシコW杯を観戦するために3年で退社。その後フリーランスのスポーツライターに転身し、W杯は7回現地取材した。育成年代にも造詣が深く、多くの指導者と親交が深い。指導者、選手ら約150人にロングインタビューを実施。長男は元Jリーガーの加部未蘭。最近、選手主体のボトムアップ方式で部活に取り組む堀越高校サッカー部のノンフィクション『毎日の部活が高校生活一番の宝物』(竹書房)を上梓。『日本サッカー戦記~青銅の時代から新世紀へ』『サッカー通訳戦記』『それでも「美談」になる高校サッカーの非常識』(いずれもカンゼン)、『大和魂のモダンサッカー』『サッカー移民』(ともに双葉社)、『祝祭』(小学館文庫)など著書多数。

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