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放任じゃない「選手主体の部活」成功の鍵は? 指導側に必要な“プロレベル”の見識

都大会決勝のゴールに見えた選手の「プレーを選ぶ力」の成熟

 選手の自主性は尊重する。ただしゼロから積み上げていくのをただ見守るだけではなく、選手たちの意見を汲み取りながら、その背景にはスタッフ同士の侃々諤々の論議もある。

「今チームでは毎週1回全体ミーティングを開き、全員が課題を可視化できる状態になっています。チームはA1とA2に分かれ、それぞれトレーニングの強度や技術に違いはありますが、上はキャプテンから下は新入生まで描く絵が異なるということはありません」

 例えば高校サッカー選手権・東京都大会のブロック決勝でゴールを生み出したのも、ゲームモデルで提示してある得点パターンだったという。

「攻撃のパターンも選手たちがゼロから編み出すというよりは、提示されたパターンの中から選手たちが選択しています。ただ[1]というパターンを提示してあったとしても、それを[2][3][4]へと広げていくのはピッチ上の選手たちです。それに都大会決勝という舞台で、高校生たちがそれを表現できるのは、深く理解し日常から相当やり込んでいるからです。

 いくらトレーニングで積み重ねてきても、いざ試合になれば蹴り合いに終わってしまうなんてこともありがち。僕らが提示しただけでは、あそこまではできない。彼らのプレーを選ぶ力が成熟していた証拠ですよ」

 佐藤自身が「今年勝てなければ、この先10年間は(勝て)ないよ」と言い続けてきた。そんな“自信作”が29年ぶりに歴史の扉を開いた。(文中敬称略)

(加部 究 / Kiwamu Kabe)

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加部 究

1958年生まれ。大学卒業後、スポーツ新聞社に勤めるが86年メキシコW杯を観戦するために3年で退社。その後フリーランスのスポーツライターに転身し、W杯は7回現地取材した。育成年代にも造詣が深く、多くの指導者と親交が深い。指導者、選手ら約150人にロングインタビューを実施。長男は元Jリーガーの加部未蘭。最近、選手主体のボトムアップ方式で部活に取り組む堀越高校サッカー部のノンフィクション『毎日の部活が高校生活一番の宝物』(竹書房)を上梓。『日本サッカー戦記~青銅の時代から新世紀へ』『サッカー通訳戦記』『それでも「美談」になる高校サッカーの非常識』(いずれもカンゼン)、『大和魂のモダンサッカー』『サッカー移民』(ともに双葉社)、『祝祭』(小学館文庫)など著書多数。

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