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「スポーツって楽しい」と思えるか 日独で変わらない「最初に出会う指導者」の重要性

スポーツの良さはなんだろうって考えた時に、やっぱりまず最初にくるのは楽しみであり、喜びだ。体を動かすことが楽しいし、仲間と一緒に過ごす時間が嬉しい。それに適度な運動は集中力のコントロールを促すし、学習意欲にも好影響をもたらす。そして免疫力がつき、健康につながる。

子供とスポーツの最初の出会い方について【写真:Getty Images】
子供とスポーツの最初の出会い方について【写真:Getty Images】

【ドイツ在住日本人コーチの「サッカーと子育て論」】その後の環境を左右する子供とスポーツの最初の出会い方

 スポーツの良さはなんだろうって考えた時に、やっぱりまず最初にくるのは楽しみであり、喜びだ。体を動かすことが楽しいし、仲間と一緒に過ごす時間が嬉しい。それに適度な運動は集中力のコントロールを促すし、学習意欲にも好影響をもたらす。そして免疫力がつき、健康につながる。

 でも世界中で子供たちが運動をする機会が減ってきている。社会のあり方や生活習慣の変化は子供たちの日常から、誰にも邪魔されずに自由に走り回れる環境が少なくなってきているのだ。スポーツを楽しんでやっている子は今でもやっている。でも、やっていない子は本当にやっていない。

 運動をする楽しさを知る機会がなかったのか、あるいはやってみたいけど自分に合った場所を見つけることができないからか。環境的な問題もあるかもしれないし、金銭的な事情もあるかもしれない。

 ドイツにおいてもそうだ。だからブンデスリーガのクラブや市町村のスポーツ協会は、自分たちから積極的な働きかけをしている。

 例えばSCフライブルクでは近年、市内近郊の幼稚園、小学校と提携をして、普段あまり体を動かしたりしない子供たちにスポーツの楽しさを知ってもらうための活動を積極的に展開している。プロジェクトリーダーの1人、フリドヨフ・クネザーさんは次のように語っていた。

「ある研究では12歳以下の子供たちのうち約80%が、十分に体を動かしていないというデータも出ています。体を動かすことは義務ではありません。でもスポーツを通じて仲間と一緒に体を動かすことで得られる喜びや嬉しさというのを、できるだけたくさんの子供たちに経験してもらいたいと願っています」

 スポーツって楽しいんだという感覚を、子供の頃から持っておくことは人生においてもポジティブに作用する。大事なきっかけ作り。だから彼らがスポーツと出会う最初の機会で、どんな大人と触れ合うかはとても大きな意味があると思うのだ。

 小さな子供たちがサッカーをしたいと楽しみにグラウンドに集まってくる。でも指導者がそれを許さないことがある。「いいか、とにかくグラウンドいっぱいに広がるんだ。固まるな!」と語気を強めたりする。子供たちは指示通りグラウンドいっぱいに広がる。

 するとどうなるだろう? 8割近くの子は終わるまでほとんどボールに触れずに、ただ立っているだけの状態になってしまう。結局足の速い子や少しボール扱いの上手い子だけがボールを蹴っているという風景が続いていく。知人に聞いた実際にあった話だ。これで「スポーツって楽しいな」と思えるだろうか。その知人はそれ以来、サッカーが嫌いになったという。

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中野 吉之伴

1977年生まれ。ドイツサッカー連盟公認A級ライセンスを保持する現役育成指導者。ドイツでの指導歴は20年以上。SCフライブルクU-15チームで研鑽を積み、現在は元ブンデスリーガクラブであるフライブルガーFCのU12監督と地元町クラブのSVホッホドルフU19監督を兼任する。執筆では現場での経験を生かした論理的分析が得意で、特に育成・グラスルーツサッカーのスペシャリスト。著書に『サッカー年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)、『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)がある。WEBマガジン「フッスバルラボ」主筆・運営。

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