ドイツと差を生む「16~20歳」の育成環境とは 一部強豪で続く日本の“非科学的”練習
強豪校で2軍や3軍の選手に、もっと多くの試合機会を確保すべき
日本の育成事情も少しずつ変化の兆しは見えるが、依然として一部強豪校などでは練習量に依存し、強度の不足したトレーニングが継続されている。しかも理不尽極まるトレーニングの先には、真剣勝負の機会さえ担保されない選手たちが溢れている。
改めて鈴木は語る。
「千葉県協会の理事長を務めた鍋島和夫先生などは、以前から登録はチーム単位ではなく、個人単位に変えるべきだと独自のアイデアを主張していました。個人登録にすれば、強豪校で2軍や3軍の選手たちが別のチームで大会に参加することができる。そうやって試合機会を確保していくべきだと。
しかしJFA(日本サッカー協会)からは、世界に追いつくための具体的な施策が発信されず、どうしても大人しいイエスマンばかりの組織に見えてしまいます。実際にトレーニング方法は、フィジカルやメンタル以上に世界と差があるのかもしれません」
育成環境を中心に、日本サッカーには問題が山積している。しかし、かつて「皇帝」の異名をとり、監督、主将いずれの立場でもワールドカップを制したフランツ・ベッケンバウアーや、マティアス・ザマーのように強烈なリーダーシップで改革を主導する人物が、日本には見当たらない。(文中敬称略)
[プロフィール]
鈴木良平(すずき・りょうへい)
1949年生まれ。東海大学を卒業後、73年に西ドイツ(当時)のボルシアMGへ留学。名将ヘネス・バイスバイラーの下で学びながら、ドイツサッカー連盟S級ライセンスを取得した。84-85シーズンにはブンデスリーガ1部のビーレフェルトのヘッドコーチ兼ユース監督を務めた。その後は日本女子代表初の専任監督に就任するなど女子サッカーの発展にも尽力。ブンデスリーガなどのテレビ解説者としても活躍する。
(加部 究 / Kiwamu Kabe)