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学校に“スポーツを託した”日本の失敗 「遊びと教育」が一緒になり常態化したパワハラ指導

日本のアマチュアスポーツに蔓延する過度な勝利至上主義

 彼我の違いは、人生観にも反映されている。

「もともと海外では人生は楽しむものだという考え方が根底にある。練習も仕事も短時間で効率的にこなし、オンとオフを明確に分ける。サッカーも監督の前でやるトレーニングがすべてで、逆に試合と同じ状況、強度で行う。それで十分なんです。ところが日本では長時間続けることで安心しているんです」

 過度な勝利至上主義は、今年で102回目を迎える全国高校野球選手権に端を発していると見る。

「すべての試合が天国と地獄に色分けされる。勝っても負けても、そこにカタルシスがある。やがてサッカーも続くわけですが“涙のロッカールーム”なんて、まさに典型です。本来すべてのアマチュアスポーツは選手のためのものでなければならない。ところがいつしか選手は二の次になり、観客やテレビの視聴者中心のイベントにすり替わってしまった」

 世界中の非常識が日本の常識になっているのに、どこからも声が挙がってこない。またパワハラに走るのも、高齢の指導者に限ったことではない。

「本当に根が深い……」

 しかしだからこそ幸野は、この異常な環境を変えていきたいと思う。(文中敬称略)

[プロフィール]
幸野健一(こうの・けんいち)

1961年9月25日生まれ。7歳よりサッカーを始め、17歳の時にイングランドへ渡りプレーした。現在は育成を中心にサッカーに関わる課題解決をはかる「サッカー・コンサルタント」として活動。2014年に「アーセナルサッカースクール市川」を開校させ、代表に就任。19年に「FC市川GUNNERS」にチーム名変更、20年3月から業務提携した市川SCのGMに就任した。息子の志有人はJFAアカデミー福島1期生のプロサッカー選手で、09年U-17W杯に出場した。

(加部 究 / Kiwamu Kabe)

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加部 究

1958年生まれ。大学卒業後、スポーツ新聞社に勤めるが86年メキシコW杯を観戦するために3年で退社。その後フリーランスのスポーツライターに転身し、W杯は7回現地取材した。育成年代にも造詣が深く、多くの指導者と親交が深い。指導者、選手ら約150人にロングインタビューを実施。長男は元Jリーガーの加部未蘭。最近、選手主体のボトムアップ方式で部活に取り組む堀越高校サッカー部のノンフィクション『毎日の部活が高校生活一番の宝物』(竹書房)を上梓。『日本サッカー戦記~青銅の時代から新世紀へ』『サッカー通訳戦記』『それでも「美談」になる高校サッカーの非常識』(いずれもカンゼン)、『大和魂のモダンサッカー』『サッカー移民』(ともに双葉社)、『祝祭』(小学館文庫)など著書多数。

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