女子選手は「よく喋る」 “集団解決力”の高さに驚き「指導者が言い過ぎたら失敗」
選手が反復するなかで「勝手に覚えていく環境を与える」のが最適な練習
トレーニング中には、口うるさく何かを言いたくはない。
「もともとサッカーは難しい。割り切れないこともいっぱいあって、それに対して何かを言う必要はない。まず指導者がいろいろ言い出した時点で、そのトレーニングは失敗なんです。だったら繰り返して勝手に覚えていく環境を与える。それが最適だと思っています」
男子を指導していた頃とは、明らかに現場の空気が違っているそうである。
「男子にはもっと厳しく接していたし、今よりだいぶピリッとしていました。でもそれには理由があって、女子は『ここはやらなきゃ』という時には勝手に引き締まる。自分たちで締まっていこうとしているのに、指導者からも言われれば逆に引いてしまう。言われる筋合いのないことですからね」
女子の選手たちにも、与えられた特別な環境に誇りと自信を持ち、長く続けて欲しいと願う。
「でも20代後半に差しかかると、結婚や職を探すことなどで、一度(引退を)考えるようです。まだ選手としては全然大丈夫なのにと話すと、逆に反発されてしまうこともあります」
様々な葛藤や分析を経て、ちふれASエルフェン埼玉では「気持ち良く楽しんで取り組んでもらう」トレーニングを実践している。
「まあ、自分も変わって来たんですよ」
そう言って、菅澤は豪快に笑った。
[プロフィール]
菅澤大我(すがさわ・たいが)
1974年6月30日生まれ。96年に自身が選手として所属した読売クラブ(現・東京V)ユースのコーチとなり、元日本代表FW森本貴幸、日本代表MF小林祐希ら多くの逸材を発掘し育てた。2005年限りで退団すると、その後は名古屋、京都、千葉、熊本とJクラブの下部組織コーチを歴任。18年になでしこリーグ2部のちふれASエルフェン埼玉の監督になると、昨季の皇后杯ではクラブ史上初のベスト4進出に導いた。
(加部 究 / Kiwamu Kabe)