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サッカー石川直宏×馬場憂太 個が突き抜けていた元FC東京コンビが思う「個の育て方」

馬場さんが思う指導者の理想「どれだけ上手くなりたいという気持ちを引き出せるか」

馬場「とにかく自由。楽しんで遊びながらの練習でも良いと思う。そういう経験が指導のベースにある。言うべきところはしっかりと伝える。あとは、ピッチを自由に発想しながら、戦える武器を身に付けてもらいたいと思っている。前提になるのは基礎。『止める、蹴る、運ぶ』を自然にできるようなプレーヤーになってほしい。僕自身も35歳でまだまだ動けるので、実際にプレーに自分が入って、コントロール、パスを見せながら力になりたいと思っています」

馬場「サッカーが好きで、やり続ければ今、上手い子も必ず追い抜かすことができる。大事なのは、どれだけ上手くなりたいという気持ちを引き出せるか。試合がある日は『今日、試合があるんだよ』『やるからには負けたらダメなんだよ』と遊びとは線を引く意識をさせながらやっている。なんてことのないコントロールで、自然と前を向けてゴールを目指している子が増えているのを見ると『ああ、できるようになっているな』と嬉しくなります」

 一方、石川さんも引退後は日本代表のユニホームをまとった元名手として、多岐に渡る活動をしているが、普及活動もその一つ。最近は、小学生にサッカーを教える機会も増えているという。

石川「まずは自分に矢印を向けてもらうこと。自分は何が得意で、何に課題を持っているのか認識してもらう。この年代は、最初は躓いても継続すれば、乗り越えられるもの。そういう成功体験を積み重ねて、乗り越え方を知るということを特に意識している。人生には上手くいく時もあれば、うまくいかない時も必ずある。不安に思ってチャレンジしないより、課題が出た方がチャレンジしている証拠になる。その積み重ねが自分への自信に繋がり、親御さんも成長を感じる。何よりもチャレンジです」

 馬場さんが三菱養和SSの体験が生きていたように、石川さん自身も育成年代で受けた教えの影響は大きかった。地元の少年少女サッカークラブ、横須賀シーガルスに在籍。当時の経験が飛躍の礎となった。

石川「小学生年代は技術的な反復練習を大事にするチームだった。試合での勝利は嬉しいし、楽しいので勝つためのサッカーをしがちだけど、僕らのチームは目の前の相手をどう交わすかを考えて、ボールをコントロールする練習中心。リフティング、ドリブル、1対1……。最後にある楽しみがゲーム。自分で局面を変える楽しみがあった。小学校の中学年までは『パスをするな』と言われるくらいだったけど、そういうサッカーは周りから見ても成長曲線が凄くあって、結果にもつながった。他のチームも個を生かす練習に変わっていました」

 馬場さんと石川さん。2人に共通するのは、圧倒的な個性があり、選手として芽が出たこと。特に石川さんは圧倒的なスピードを武器にしてドリブル突破を売りにしていた。どうすれば「突き抜ける個」はどうすれば育つのか。

石川「どんな選手も得意、不得意のプレーがあるけど、サッカーの良さはチームスポーツで、特長を出せるように周りがフォローできる点。なので、まずは自分の特長を発揮できるように、得意なことを伸ばすこと。そうすることで、できることとできないことも明確になり、周りも『彼はこれが得意だから、こんなプレーをしてもらおう。その分、これが苦手だから、自分がサポートしよう』と反応できれば、得意なことをもっと伸ばしていける。そうしてフォローし合う関係から、周りを意識することで、たとえミスが起きてもカバーしてくれる選手には感謝できるし、互いに高め合うこともできると思います」

馬場「普及年代に技術を身に付けることが大事だと思う。中学、高校と大人になるにつれ、体も固くなってくる。僕も直さんと一緒で、左足が得意だったり、GKが得意だったり、それぞれに合った特長を身に付けてほしいと思っている。この年代ではマイナスを補うことより、プラスの部分でとにかく勝負してもらう。そのくらい、この年代の基礎が将来にとって大事と思っています」

 現在、スポーツ界の育成現場には「勝利至上主義」の問題が付いて回る。小学生レベルのサッカーでも指導者が勝利を求め、厳しく指導することも珍しくない。「楽しむこと」と「勝つこと」のバランスはどう持つべきか。

石川「もちろん、勝ちにこだわるべきと思う。勝ちを目指すことで喜び、悲しみが必ず生まれる。それが前に進む力になる。例えば、体が小さいチームと戦う時にどうするか。ゴール前に蹴って勝負させるという考えは簡単だけど、ベースとして自分たちはどういうチームで、どんな特徴があって、その中で自分が何をしたいのか。それが、間違いなく必要。この年代で言えば、自分が思ったところに止める、運ぶ、蹴る、ということ。その質が高まれば引き出しが増える。勝ち負け、というのはその後についてくるべきじゃないか」

 持ち前のキャラクターで指導現場を明るく照らしている馬場さん。「僕は本当にあまり怒らない」というが「楽しむこと」を重視しながらも、その裏で「戦う気持ち」を掻き立て、やる気をくすぐることに長けている。

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