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猛反対からのスタート 鹿児島実業の新体操は、なぜももクロや笑点で踊るのか

「コミカルな演技」を通じて全員がヒーローになり、自信も付いてくると語る樋口靖久監督(右)【写真:平野貴也】
「コミカルな演技」を通じて全員がヒーローになり、自信も付いてくると語る樋口靖久監督(右)【写真:平野貴也】

身につく表現力「演技会をする度に、全員がヒーローになれます」

――新体操に取り組んだことで得られる体験こそが宝になるということですね

「平日は16時から20時、土・日で長いときは7時半から20時くらいまで(休憩を挟みながら)部活動をやることもあります。でも、非常に長い時間を、男子新体操というマイナーな競技に費やして、一生懸命に取り組んでくれるということは、競技に魅力があるということだと思いますし、そういう子どもたちがいるのは、ありがたいことです。私は、なかなか(上位入賞の)賞状をあげることはできません。コミカルにすることで減点されている部分もありますから(笑)。

 でも、コミカルな部分を通して、注目されたり、テレビに出してもらったり、ほかの高校ではできないような一生の思い出を作ってあげることが僕の役割かなと思っています。全国大会に行って、知らないチームや観客が、マットに立った6人のためだけに割れんばかりの拍手をしてくれる――今後の人生を歩む上で、よほどのことがない限り、できない経験だと思います。だから、演技を終えて監督席に帰って来るときの顔が、僕は一番好きです。満足した表情で帰って来る。それが、僕にとって一番嬉しい瞬間。一生の思い出を作ってあげられるように工夫したり、挑戦したりしています』

――実際、テレビCMに登場する(2018年、鹿児島市のPRコマーシャルで主演)、イベントで演技を披露するという経験は、非常に貴重なものだと思います。

「子どもや親にとっては、最高だと思います。私にとっては、少し面倒が増えるところもあるのですが(笑)。面白いからと言って、たくさん呼んでもらって、生徒をいろいろなところへ連れて行ってあげられますし、行った先で彼らはスターです。思い出に残るでしょうし、あの輝ける一瞬があるから、練習を頑張れるのだと思います。

 サッカーやバドミントンなどとは違い、新体操は、ゲーム(試合)中心の練習ができません。同じことを何度も繰り返しますし、練習は地味で面白くないことも多いです。でも、コミカルな演技という特徴を持つことで、演技会をやる度に、全員がヒーローになれます。それに、大会に出場できない下級生でも、イベントで演技をすることで、次の年につながっている部分もあります。人前での経験は、ほかの学校よりかなり多くやっているので、初めは自己表現できない子も自信がついてきて、自己表現ができるようになっています」

(後編に続く)

樋口靖久(ひぐち やすひさ)
1971年4月28日生まれ。鹿児島市出身。鹿児島実業高、新体操部OB。国士舘大で日本一に輝く。大学卒業後、1995年から鹿児島実業高でコーチを務め、2001年から監督に就任。コミカルな団体演技を作り上げており、脚光を浴びている。

◇インターハイの新体操は6日から2日間に渡り熱戦が繰り広げられる。今大会は全国高体連公式インターハイ応援サイト「インハイTV」を展開。インターハイ全30競技の熱戦を無料で配信中。また、映像は試合終了後でもさかのぼって視聴でき、熱戦を振り返ることができる。

(平野 貴也 / Takaya Hirano)

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