「IQだけじゃなくEQが高い」 偏差値72の名門校・女子テニス部が実践する文武両道の姿
クラブチーム、テニススクールではなく「高校の部活」に求めるもの
硬式テニス独特の事情もある。小さい頃から所属しているクラブチームやテニススクールを続けている子もいるため、全国レベルの選手の中には、高校の部活に籍だけ置き、実質はクラブで練習するという選手も少なくない。
「毎日クラブで練習していては、チームの一員になれない」と立命館守山では週に2日必ず部活に来る日を設け、チームワークを高めている。「“応援される部活”がモットーなので、技術を身につけるだけではなく、部活を通して人間として成長してほしい。それぞれが部活に来た時に、どういう行動をするべきかを考えさせている」
こうした上村コーチの思いは、部員たちにしっかりと伝わっている。キャプテンを務める本郷由梨(2年)は「テニスがうまくなることも重要ですが、それ以前に人間関係だったり、各自が今後に生かせるものを探すのが高校の部活だと思う。キャプテンとして、チーム全体、そしてチームに関わる周りを含めて、しっかりと見ていきたい。そしてそれぞれが部活に求めていることをどれだけ達成できるかを考えていきたい」と頼もしい。
1年生の濱は、「部活を経験して、自分のためだけではなく、仲間の気持ちも背負っているので、より集中しなければと考えるようになった」と自身の変化を感じている。
インターハイに臨む団体戦のメンバーは、浅田美咲(3年)、小野葵(2年)、森村碧、濱あゆみ、神内彩衣(1年)の5人。皆、5~6歳でテニスを始め、小、中学時代は全国大会で活躍した実力者揃いだが、インターハイ予選の決勝では予想外に苦戦した。
その原因の一つが、団体戦の応援だ。「団体戦だけは歌を歌ったり、1ポイントごとにわーっと声が上がるので、コートの中は異様な雰囲気ですね。1年生は初めてのことなので、終わったらみんな鳥肌が立っていますよ。
特にジュニアで活躍していた子たちは、これまでシーンとした中で試合をしてきているので、初めての経験だと思います。絶対に負けない子が、団体戦では緊張して勝てなかったりしますね。実際に去年はそれで力が出せず、インターハイを逃しました。今年の1年生は元々実力を持っているので、そのパフォーマンスをいかに出させるかだけを考えていました」
選手の潜在能力を引き出すため、上村コーチが取り組んだのが「模擬練習」だった。ギャラリーが多くても緊張しないよう、練習試合の際、部員を応援という形で同行し、応援のある中での練習試合を多く積ませた。