前のめりが基本姿勢、全身全霊で仲間を鼓舞 岡山・作陽に見たブカツの魅力、むせび泣いた監督の愛
まとめてきた川野監督もむせび泣き「お前たちは最高に頑張った」
部員の団結力を生んでいるのが、川野一道監督。「厳しい中にも愛があって、ついていきたい先生。日本一にしたいと思っています」。藪中の言葉にも信頼感が込められていた。
準決勝の東海大相模戦、そんな川野監督が試合中に退席を命じられる試練が訪れた。助言のタイミングが不適切だったことが理由。すぐそばで鼓舞してくれる大きな存在を欠きながら、副将・工藤瑠希(3年)が横四方固で一本勝ち。しかし、大将の高橋翔(3年)が合せ技一本で敗れ、準決勝敗退となった。
試合後、畳から離れていた川野監督は、教え子と一緒にむせび泣いた。「最後まで見届けられず申し訳ない」。目を真っ赤にして「柔道を極めることが全てじゃない。柔道を通じて人間的に成長することが大事。お前たちは最高に頑張った」とそれぞれの肩を叩いて労った。
川野監督にスタンドの大応援について質問すると「心強いですね」と声を震わせ、こう語ってくれた。
「一つの思いを共有して、勝った負けたじゃないところにソウル(魂)みたいなものを皆で持っていると思います。最終的に、柔道は個人種目です。でも僕は将来、この子たちが何かの仕事をしたとき、チームでまとまって戦った経験が必ず役に立つと思うんです」
監督とともにチームを作り上げてきた主将の長内健多(3年)は「3年間、先生を信頼してやってきた今日が最後の日。ほんとに最後なんだなって……。ありがとうございますという感謝の気持ちしかありません」と涙。北海道で、熱い部活動の在り方に心打たれた。
(THE ANSWER編集部・宮内 宏哉 / Hiroya Miyauchi)