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「プリンセス・メグ」と呼ばれて 34歳、栗原恵の今 「8割引退」から現役続行の理由

「8割引退」を覆した理由「吉原監督以外なら心は揺れなかった」

「その時は現役引退とか、現役続行とか全く考えてなかったんです。でもしばらくすると、もうこの年齢だし、綺麗に引退と決めてもいいのかなと両親に話した時、私はすぐに白黒つけたがる性格なんですが、母が『今すぐつけなくても“移籍希望”として可能性を残しておいても悪いことじゃないんじゃない?』と言ってくれて。今まで心配、迷惑をいっぱいかけているので、そこは言うことを聞いておこうかなと。なので、とりあえず『移籍希望』という形。でも、オファーはないだろうと思っていたし、自分でも凄く現役をやりたいということもなかったんですが、残しておいたものをチームからオファーを頂きまして……」

 オファーを受ける前の「現役か引退か」の心境を問うと「8割引退だった」と打ち明けた。そこまで気持ちを傾かせたのは“空白期間”に過ごしたバレーのない日々。33年の人生で経験したことがない刺激に溢れていたからだ。

「辞めてからの生活が楽しくて。4か月、今までできなかったことをたくさん始めました。次の日の練習とか、休み明けの練習とかを考えると、自制しての生活。遅くまでご飯を食べたり、お酒を飲んだりということもなかなかできない。でも、目覚まし時計もかけず、何かに縛られない生活をして、こんな世界もあるんだなと思いました」

 週1度のオフの生活から解放された。それまでは美容院、フットのネイルサロン、友達と食事も行きたいとなると、朝から晩まで予定を入れてしまう。「でも、それが1日1個でいい。今日、美容室行きたい。明日、ネイルサロン行こう。友達から『今週、ごはんに行かない』と誘われても『今週は何曜日がオフだよ』と言わなくても明日行ける。そういうのがすごく新鮮で」と笑う。

 バレーにすべてを捧げ、駆け抜けてきた人生。三田尻女子高時代は全国優勝した翌日に練習をするような厳しい環境でコンビニすら許されず、学校の隣のローソンの青い屋根に憧れを抱いていた環境だった。だからこそ、同世代の女性にとってはなんでもない“普通の生活”が輝いて見えた。ただ、もう一度、バレーの情熱に火を灯した人が「トモさん」だった。

 なぜ、最終的に「2割」の現役を選択したのか。「監督の存在ですね」とはっきり言った。「監督」とは全日本主将を務めて一緒にプレーし、栗原にオファーを出したJTの吉原知子監督だ。ある日突然、電話が鳴り、会って話した。

「若い時代をずっと一緒に過ごして、18歳という何も分からない状態で代表に入った時、トップでやっていた方に10年以上経った今、『また一緒にやろうよ』と声をかけてもらうのは特別なもの。もし吉原監督以外の方に声をかけていただいても、心は揺れなかっただろうなと思います。そのくらい、監督の存在は大きかったです」

 吉原監督から影響を受けたことは数えきれない。「ベテランとしての立ち振る舞いが私とは違います。本当にストイックな方で体育館に入ってきた瞬間、空気がピリッとしていたし、トモさんの一言に胸がヒュッとなる感じ」。だからこそ、オファーに対して喜びを感じる半面、覚悟をもって、真剣に向き合った。

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