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「部活と恋愛」は本当にいけないのか 海外コーチは言う、「もっと恋愛をしろ」と―

「責任を持って交際しなさい」と伝えられる指導者の必要性

「当然、そういう気持ちは仕方ないと思います。ただ、仕事と一緒で指導者のなかにはリスクしか考えない人もいる。もちろん、リスクを考えることも大事ですが、ネガティブにばかり捉えていても何も生まれない。一度しかない人生でそんなにできないことあるのかなと。そもそも、できることの方が少ないのに、最初からできないと言われて人は育つのかと感じる部分もあります」

 こう持論を語った伊藤さん。求められるのは、指導者が生徒とコミュニケーションを取ること。教員を務める大学でも、意識している部分という。

「学生と恋愛の話をすごくします。しないと彼らは自分のことを話してくれないから。例えば、この子は何か問題を起こすかもしれないと危機感を感じても、それを注意するためには普段からコミュニケーションを取っていないと、そもそも気づけない。生徒たちが精神的に悩んでいるとか、体の不調を抱えているとか、1人の先生に対して生徒の人数が多すぎて難しい面はありますが、私は他愛もない話をたくさんします。恋愛についても、未来がまだまだあるから、いろんな異性と出会いなさいと。そういう部分でも、授業以上の楽しさを教えられたらなと思っています」

 生徒との他愛もないコミュニケーション。その裏には、水泳界の名将から培った教えがある。競泳日本代表・平井伯昌ヘッドコーチ。多くのオリンピック選手など、女子選手も育て上げてきた。

「平井先生に『女子選手とどう関わっているんですか?』と聞くと『何でもない話をたくさんするよ。そうしたら、選手から悩みを言ってきてくれるんだ』と。私もそうだなと思うんです。だから、何でもない話をしようと。学生が『一人暮らしをしていて寂しいんですよ』とか、小さなところでも不安がいっぱいあるので。そういうところに気づける先生になりたいと思います」

 このように経験談を交えながら、思いを語ってくれた伊藤さん。指導者も葛藤を抱えながら「恋愛は卒業後でもできるから」と縛っていることもあるだろう。果たして、「部活と恋愛」にどう向き合っていけばいいのか。

「生理など、女子選手の体の問題にも関わってくるけど、そういう部分も含め、指導者が分かっていかないといけない気がします。日本は価値観が画一化されやすいからつらい部分。正しいものは正しい、ダメなものはダメと、みんなが同じ認識。ユニークさとは考えられづらい。指導者は『責任を持って交際しなさい』と伝えられるといいと思っています。『ダメだ、別れろ』ということではなく、しっかりと向き合い、お互いに将来のビジョンとして、どんなレベル、成績まで行きたいのか話し合うこと。私自身は『もっと恋愛をしろ』という言葉にすごく救われ、競技を頑張れると思いました。難しい問題ではありますが、生徒との関係をより密にして、いかに指導者が“管理しないようにして管理するか”という部分が問われると思います」

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伊藤 華英

 日本代表選手として2012年ロンドン五輪まで日本競泳会に貢献。2004年アテネ五輪出場確実と騒がれたが、選考会で実力を発揮できず、出場を逃す。水泳が心底好きという気持ちと、五輪にどうしても行きたいという強い気持ちで、2008年女子100m背泳ぎ日本記録を樹立し、初めて五輪代表選手となる。

 その後、メダル獲得を目標にロンドン五輪を目指すが、怪我により2009年に背泳ぎから自由形に転向。自由形の日本代表選手として、世界選手権・アジア大会での数々のメダル獲得を経て、2012年ロンドン五輪・自由形の代表選手となる。2012年10月の岐阜国体を最後に現役引退。

 引退後、ピラティスの資格取得とともに、水泳とピラティスの素晴らしさを多くの人に伝えたいと活動中。また、スポーツ界の環境保全を啓発・実践する「JOCオリンピック・ムーヴメントアンバサダー」としても活動中。

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