ラグビー界に勝者なき全国大会のなぜ 15人揃わぬ部活の現実…花園王者から合同チームまで、勝敗を超えた3日間

ラグビー界が真剣かつ真摯に向き合う必要があるのは“裾野”の高校生たち
今回の釜石取材は敢えて寄り道をしてみた。東京から釜石に行くには、新幹線、JR釜石線を乗り継ぐ経路が通常だが、震災で大きな被害を被った三陸沿岸の町をバス、鉄道を使って北上した。復興具合を少しでも確かめたかったからだ。“通りすがり”程度の滞在だったため、得られた情報は断片的で、もしかしたら正確性を欠くものかも知れないが、そこで目の当たりにしたのは、気仙沼、大船渡など、かろうじて産業がある地域では、その街並みから市民生活を取り戻しつつある印象を受けたが、津波に襲われた湾岸の低地が未だに平地のままの町、震災以降そのまま放置されているような海辺の小さな“元集落”が何箇所もあった。
釜石市でも、3月の年度末で復興庁の出先機関として市内に置かれてきた岩手復興局が閉鎖されたと聞いたが、各地を横切った程度でも、地元と同時に国が果たすべきタスクはまだまだ残っている印象だった。だからこそ、これから未来を切り開いていく高校世代の子供たちが、この地で学び、この地の活性化の一助となるようなら「交流会」は意義深い。再び野上校長の言葉だ。
「復興の一環として僕らに出来ることはなんやというところから始めたんです。ここへ来たら皆とゲームが出来るぞとなったら、いいなと思ったんです。東北でラグビーする高校生たちもちょっと増えるかな、そんなことあったらいいよなと。この子たちが、ここで試合するのは1年だけかも知れません。でも、戻ってから仲間に釜石で試合やったぞ、防災教育もあったぞ、復興ってこんなん見たよと話すと、僕らも行きたいと次の学生は先生に言うてね。親にも、ちょっとお金がかかるけど行きたいんやと話せば、また来年も続くじゃないですか。で、自然災害って、実は日本中で直近のはなしになるんです。そんな時には若い子らが救援隊になる。そしたらラグビーの子って、頑張るじゃないですか。若い子にそういう意識を持ってもらうのもええことやなと思います。ラグビーを通じて、こういう体験をさせてあげるのも面白いなと思うので、これからも続けていきたいですね」
理想をいえば、こんな交流会が必要なくなるほどに東北の復興が進み、この地の高校チームが全国区で大暴れする日が来るのが最上のシナリオだが、実現にはすこし時間がかかりそうだ。最後にゼンコー副実行委員長に、これからの交流会について聞いてみた。
「これだけの高校生が一気に来ると、釜石市内の宿だけじゃ収容できないので、大槌や宮古辺りの宿舎に宿泊するチームもいます。なので2年ほど前からお願いしていた県からの補助も、今年から出していただけるようになっています。これからは、釜石だけじゃなくて近隣の会場も使ってもいいと思います。宮古にも芝生のグラウンドがあるし、大船渡には人工芝グラウンドがある。そこでやりながら、最後に復興スタジアムで試合するのもいいですよね。日本協会では、2035年W杯の開催を考えていますが、そうなると釜石ももう一度手を挙げることも十分考えられます。それに伴い、施設が整備されれば、この交流会で使えるものも出て来るかも知れない」
独自路線の手作り交流会だが、大阪の「花園」、熊谷の「選抜」、そして福岡の「サニックスワールドユース」という高校生の大会に、一味違った東北を舞台とした“大会”へ成長させていきたいという夢もある。その中でもとりわけこの交流会が興味深いのは、刻々と深刻さを増す競技人口の停滞や部員不足による大会参加チームの激減という高校ラグビーの課題に役立つ可能性を秘めていることだ。花園や選抜で関係者が勝った負けたで一喜一憂している中で、東北にとどまらず各地で「部活」が危機的な状況に瀕している。
ラグビー界が真剣かつ真摯に向き合う必要があるのは、9合目や頂上に立つチームではなく“裾野”の高校生たちだ。こんな思いを再確認させてくれた釜石の3日間だった。
(吉田 宏 / Hiroshi Yoshida)
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