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1万m27分台、箱根駅伝で各校が意識する“逸材3年生” 誓う5強崩し「他校のエースを倒したい」――帝京大・楠岡由浩

トラックシーズンは「80点ぐらい」 夏合宿が飛躍を遂げる重要な時間に

――練習にプラスアルファの部分で、どんなメニューを付け加えていたのですか。

「監督のメニューの後は、例えば距離走の後にシュートインターバルを入れて練習で足が重い中でもスピードで押していったり、監督のメニューの設定を速くして、量を増やしたりしていました。練習での余裕度はかなり出てきましたね。ただ、闇雲に上げてしまうと故障に繋がってしまいます。故障しない範囲内でペースを上げたり、プラスアルファの練習をこなしていくことが大事なので、そこはかなり注意を払っていました」

――7月の順大記録会5000mで13分50秒12、10000mは4月の日体大で28分34秒68とともに自己ベストを更新しました。トラックシーズンを自己採点すると、100点満点で何点になりますか。

「記録では5000mと10000mの2種目で自己ベストを出して、組トップを3つ(4月日体大10000m12組、6月日体大記録会10000m6組、7月順大記録会5000m6組)取れて、ラストスパートがしっかり利いてきている感があって良かったなと思ったのですが、自分が思うようなレース展開に進まないレースも多かったので、80点ぐらいです」

 昨年の主将でエースの山中博生の10000m、28分04秒54には、まだ届かず、エースを自覚する楠岡にとって、20点をどう埋めていくのかが一つテーマになった。夏合宿は、それを考え、実践し、さらなる飛躍を遂げるために重要な時間になった。

――夏合宿は、どういうテーマで臨んだのでしょうか。

「ひとつは、夏合宿の後、駅伝を想定してロードでの練習が増えてくるので故障しないこと。もうひとつは、昨年以上の練習をするのをテーマに置いていました。昨年は、少し余裕がある中で練習をしていたんですけど、ひとつだけ練習を落としてしまったんです。まず、与えられた練習は100%こなすことが大前提で、さらに昨年以上ということを考えて練習量にもこだわりました」

――具体的にいうと、どのくらい増やしたのですか。

「内容は、監督のメニュー以上のものをやることを意識して、合宿後半はスピードを意識した練習を消化しました。昨年は、8月の月間走行距離は970キロぐらいだったのですが今年は1010キロでした。40キロ増えたのですが、これはポイント練習の量が増えての距離なので、数字以上にいい練習が出来たと思います。合宿で距離を追い過ぎてしまうと、どうしても故障につながってしまいがちです。1000キロは越えたいと思っていましたが、数字を意識するのではなく、気が付いたら1000キロ行っていて一番いいと思っていたので、そこは狙い通りにいけて良かったです」

――かなり自信を持って駅伝シーズンに入られた感じですが、駅伝の初戦となる出雲駅伝で自分なりに手応えを感じられたのでしょうか。

「出雲駅伝の前に早稲田でロードレース(The Road of WASEDA)があったのですが、そこで結果を出せたのが大きかったです。昨年は、このレースに合わせて調整して出場したのですが、ここで1度調整してしまうと出雲駅伝に合わせていくのがキツくなるので、練習の流れのままで走ろうと同期と話をしたんです。実際、合宿が終わって少し疲労の残るなかでのロード(5キロ)だったのですが、13分45秒でわりと余裕を持って走れました。ここが今季のターニングポイントというか、力がついてきているのを確認することができました」

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佐藤 俊

1963年生まれ。青山学院大学経営学部を卒業後、出版社勤務を経て1993年にフリーランスとして独立。W杯や五輪を現地取材するなどサッカーを中心に追いながら、大学駅伝などの陸上競技や卓球、伝統芸能まで幅広く執筆する。『箱根0区を駆ける者たち』(幻冬舎)、『学ぶ人 宮本恒靖』(文藝春秋)、『越境フットボーラー』(角川書店)、『箱根奪取』(集英社)など著書多数。2019年からは自ら本格的にマラソンを始め、記録更新を追い求めている。

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