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慶大4年生で内定辞退、休学「迷ったけど…」 大学5年目、7か月の“延長戦”で縮めた0秒09の価値――陸上・仲子綾乃

仲子は「納得できるレースだった」とラストレースを笑顔で走り切った【写真:中戸川知世】
仲子は「納得できるレースだった」とラストレースを笑顔で走り切った【写真:中戸川知世】

慶大2年時には3か月間休養も…「純粋に楽しめるようになった」

 中学1年で陸上競技を始め、浜松西高(静岡)2年で日本選手権に出場するなど10代から非凡な才能を発揮。慶大の総合政策学部にAO入試で現役合格し、文武両道を貫いてきたが、怪我に悩まされる時期も多かった。

 慶大2年の4月、一度は競技から離れた。「怪我ばかりで陸上を楽しめなくなっていた」。大学に通って、遊んで、アルバイトをして……“普通”の大学生を3か月。競技について相談していた知り合いに「また走ってみたらいいじゃん」と背中を押され、なんとなく走り出すと初心を思い出せた。

「良い意味で高校時代の栄光みたいなものを切り離して考えられるようになった。記録が出るって楽しいとか、勝ったらうれしいし、負けたら悔しいとか。そういうことを純粋に楽しめるようになったことがプラスに働いていると思う」

 型にはまることなく、自分に正直に歩んできた競技人生。最後に見せた清々しい表情は、一つ一つの選択が正しかったことを証明していた。

 大学は9月に卒業。来春からは商社のOLとして働く。「趣味で走る予定は?」と聞くと「ないです!」とにっこり。思い残すことはない。喜びも苦しみも味わったトラックに笑顔で別れを告げた。

(THE ANSWER編集部・山野邊 佳穂 / Kaho Yamanobe)

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